長期ケア施設における尿路感染症の不十分な治療の可能性の予測因子
Predictors of potentially suboptimal treatment of urinary tract infections in long-term care facilities
H.J. Appaneal*, A.R. Caffrey, V.V. Lopes, V. Mor, D.M. Dosa, K.L. LaPlante, T.I. Shireman
*Providence Veterans Affairs Medical Center, Providence, RI, USA
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 114-121
背景
尿路感染症(UTI)の不十分な抗菌薬治療は長期ケア施設(LTCF)に多く、施設間でばらつきがある可能性がある。大規模な評価は実施されていない。
目的
退役軍人の LTCF における UTI の不十分な治療の可能性に関して施設レベルの予測因子を特定し、施設全体でのばらつきを数値化すること。
方法
本研究はコミュニティリビングセンターとして知られる退役軍人の LTCF 120 施設における 2013 年から 2018 年の居住者21,938 例が対象の後向きコホート研究であった。不十分な治療の可能性は薬剤選択、投薬回数、および/または治療期間から評価した。UTI の不十分な治療を予測する施設の特性を明らかにするため、不十分な治療の比率が高い LTCF(≧ 中央値)および低い LTCF(< 中央値)を無条件ロジスティック回帰モデルを用いて比較した。Joinpoint 回帰モデルを用いて施設全体での差分百分率の平均を数値化した。多層ロジスティック回帰モデルを用いて施設全体でのばらつきを数値化した。
結果
不十分な抗菌薬治療の可能性の比率は LTCF 全体で10,000 入院患者延べ在院日数あたり 1.7 から 34.2 までばらつきがあった。施設全体での差分百分率の平均は 2.5%(95%信頼区間[CI]2.4 ~ 2.7)であった。不十分な治療を予測する唯一の施設の特性は、10,000 入院患者延べ在院日数あたりの UTI の発症率であった(オッズ比 4.9、95%CI 2.3 ~ 10.3)。多層モデルによって施設間のばらつきの 94%は、居住者とコミュニティリビングセンターの特性を調整後も説明がつかなかったことが示された。完全な多層モデルのオッズ比の中央値は 1.37 であった。
結論
UTI の不十分な治療の可能性は退役軍人の LTCF 全体でばらつきがあった。しかし、LTCF 全体でのばらつきの大部分は説明のつかないものであった。LTCF での不十分な抗菌薬治療を引き起こす要因を検討するために、今後も研究を継続すべきである。
監訳者コメント:
LTCF における UTI の不十分な治療に関連する因子を調査した研究だが結論は得られなかった。本研究のポイントは施設間格差が大きいということが分かった、ということであり、日本でもそれぞれの施設の状況をまずは把握することが重要である。
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