非流行施設におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の院内伝播予防のための隔離:義務とすべきか?

2020.07.31

Cohorting for preventing the nosocomial spread of carbapenemase-producing Enterobacterales in nonepidemic settings: should it be mandatory?
D. Hilliquin*, A. Lomont, J-R. Zahar
*Hôpital Édouard Herriot, GH Centre, Hospices civils de Lyon, France
Journal of Hospital Infection (2020)105, 534-545


カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales;CPE)の世界的な拡散は、医療施設における隔離の実施を推奨する国内・国際的ガイダンスの策定につながっている。しかし、基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(extendedspectrum β -lactamase-producing Enterobacterales)の拡散に関する近年のデータからみて、アウトブレイクが発生していない施設での隔離の有用性には疑問の余地がある。この点で、拡散のリスクを制御するには個人の接触隔離で十分であろう。文献の記述的レビューを実施し、隔離が果たす役割を考察した。CPE は医療施設におけるアウトブレイクに関与し、耐性菌株蔓延の発生源とみなされる。CPE は、入院期間・入院費の増加、治療選択肢が少ないこと、そのため臨床的不成功および死亡のリスクが高くなることなど悪影響の原因となる。環境と物質も CPE に汚染されているとの報告があり、アウトブレイクの発生源となりうる。ガイドラインや公表文献により隔離の実施が支持されていても、この方法を義務化すべきであることを実証する無作為化研究はない。ほとんどの研究が記述的で、隔離は通常、アウトブレイク制御のためにいくつかある方法の 1 つである。人材や物的資源を必要とするすべての医療施設に隔離が適用されるとは限らない。手指衛生遵守、抗菌薬適正使用支援、接触患者サーベイランスなど他の方法を強化しなければならない。個々の感染リスク因子も評価すべきである。結論として、隔離の実施前に、局地的疫学および資源を評価する必要がある。
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監訳者コメント
CPE のもともとの菌種は常在性が強い菌であり、易感染性患者が保持すると生涯 CPE を背負うリスクもはらんでいる。治療の選択肢を温存するためには、施設内における CPE の蔓延を防ぐ必要がある。

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