手術部位感染症の発生の指標としての手術の緊急性:100,000 件を超す外科手技からのデータ

2021.04.30

Urgency of surgery as an indicator for the occurrence of surgical site infections: data from over 100,000 surgical procedures

 

S.J.S. Aghdassi*, C. Schröder, P. Gastmeier

*Institute of Hygiene and Environmental Medicine, Germany

 

Journal of Hospital Infection (2021) 110, 1-6

 

 

背景

手術部位感染症(SSI)のリスクは患者や手技に関連する因子に影響される。緊急手術は手術医療の課題であり、SSI などのさまざまな合併症と関連する頻度が高い。

 

目的

本研究の目的は、緊急性が SSI 発生と有意に関連するか否か、さらにこの変数の収集が SSI サーベイランスにおける有用な情報をもたらすか否かを検討することである。

 

方法

ドイツの国内 SSI サーベイランスネットワークにおいて 2017 年から 2019 年に実施された帝王切開と結腸手術のデータの後向き解析を実施した。緊急性が SSI 発生に及ぼす影響を明らかにするために、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。今回の目的のために、手技と SSI のデータを、部門および患者に関連する入手可能なパラメータと関連付けた。

 

結果

計 115,648 件の手技(帝王切開 78,288 件、結腸手術 37,360 件)を分析に含めた。帝王切開 100 手技あたりの SSI 発生率は、緊急手術では 0.98(95%信頼区間[CI]0.85 ~ 1.11)、待機的手術では 0.46(95%CI 0.40 ~ 0.53)であった(P < 0.001)。観血的結腸手術 100手技あたりの SSI発生率は、緊急手術では 9.66(95%CI 8.89 ~ 10.49)、待機的手術では 8.60(95%CI 8.13 ~ 9.11)であった(P < 0.001)。腹腔鏡下結腸手術での SSI 発生率は、緊急手術と待機的手術間で有意差が認められなかった。多変量解析から、緊急性により SSI 発生率が有意に高くなったのは帝王切開のみであることが示された。

 

結論

緊急性は帝王切開の SSI リスクを有意に高めたが、結腸手術についてはそうではなかった。したがって、この変数の収集は帝王切開の SSI サーベイランスのために有用であるが、他の手技では不必要と考えられる。よって、この課題に関する今後の分析では、他の手術手技に重点を置くべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

国家規模の SSI サーベイランスの実施によるデータの共有は他施設との比較に重要である。我が国では JANIS と JHAIS があるが、こうしたデータを自施設の評価に結びつけ改善点を見いだすことが重要である。

 

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