Internet of Things 管理システムが救急集中治療室における手指衛生遵守に及ぼす影響★★

2021.03.31

Influence of the Internet of Things management system on hand hygiene compliance in an emergency intensive care unit

 

N.Xu*, C. Liu, Y. Feng, F. Li, X. Meng, Q. Lv, C. Lan

*The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, PR China

 

Journal of Hospital Infection (2021) 109, 101-106

 

背景

手指衛生は、あらゆる医療環境において感染予防のための極めて重要な戦略である。自動電子モニタリングシステムは、手指衛生率を高めることが期待されている。

 

目的

Internet of Things(IoT)管理システムが救急集中治療室の医療スタッフにおける手指衛生遵守に及ぼす影響を検討すること。

 

方法

本後向き観察研究を、2017 年 7 月 1 日から 2018 年 2 月 28 日にかけて、19 床の救急集中治療室で実施した。2017 年 11 月 1 日から救急集中治療室で実施した IoT 管理システム導入の前後について、医療スタッフ 54 名の手指衛生遵守における変化、ならびに院内感染症の発生率を比較、計数および解析した。

 

結果

IoT 管理システムの導入後、医療スタッフメンバーにおける手指衛生遵守率は、患者および周囲環境との接触前(29.5%[11,338 件中 3,347 件]対 57.9%[8,094件中  4,690件]、P < 0.001)および接触後(59.9%[16,556 件中 9,915 件]対73.8%[23,286 件中 17,194 件]、P < 0.001)において有意に改善した。しかし、清掃スタッフ 3 名における手指衛生遵守率はシステム導入後に有意に改善しなかった。さらに、救急集中治療室への IoT 管理システムの導入前後において、医療獲得感染症の発生率(2.535%[355 例中 9例]対 2.047%[342 例中 7 例]、P = 0.667)、または主要な 4 種類の多剤耐性細菌の検出率(P > 0.05)に有意差はなかった。

 

結論

IoT 管理システムにより、地方病院 1 施設の救急集中治療室の医療スタッフにおいて、清掃スタッフを除いて手指衛生率が有意に改善したが、院内感染症の発生率に有意な低下は認められなかった。手指衛生実践の質を高める必要がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

中国河南省鄭州大学病院からの報告である。IoT システムは、手指衛生の評価を「やっている」(遵守率)のデータ収集であり、「きちんとできている」(効果的な手指衛生=遵守率+質)を評価することができていないことが弱点である。すなわち手指衛生の頻度(遵守率)に加え、その質が感染対策上の大きな鍵となる。本論文において院内感染の発生率や耐性菌の検出率に変化がないのは、手指衛生の質の担保がなされていないことの証明でもある。日本の多くの医療施設で利用されている「手指消毒剤の使用量を遵守率として評価しているが、これはあくまでプロセス(過程)評価であって、アウトカム(結果)の評価ではないため、2 つの評価を並行して実施できるようにする必要がある。

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