用手呼吸時に発生する一過性の治療用エアロゾルの環境内放出に関する in vitro 研究★

2021.02.28

An in vitro investigation into the release of fugitive medical aerosols into the environment during manual ventilation

M. Mac Giolla Eain*, M. Joyce, A. O’Sullivan, J.A. McGrath, R. MacLoughlin
*Aerogen, IDA Business Park, Ireland

Journal of Hospital Infection (2021) 108, 135-141

背景
呼吸窮迫状態の患者に対する用手蘇生時に、患者に治療薬を送達するためにネブライザー療法を用いることがある。しかし、このような治療用エアロゾルを生成・送達するために用いられるデバイスは、使用する治療薬を周囲環境内に放出し、医療提供者に対して治療用エアロゾルへの望ましくない曝露をもたらす可能性がある。

目的
フィルターを使用した場合と使用しない場合の、用手蘇生バッグを用いたエアロゾルによる薬物送達時に環境内に放出される一過性の治療用エアロゾルの濃度を定量すること。

方法
時間依存性の一過性エアロゾル濃度を、医療提供者を模した位置に設置した空力学的粒子径測定器により測定した。2 種類のネブライザー、すなわち振動型メッシュ式ネブライザーおよびジェット式ネブライザーについて評価を行った。模擬患者肺に送達されたエアロゾル量についても定量した。

結果
用手蘇生バッグの排気口にフィルターを設置した場合、一過性の治療用エアロゾルには、2 種類いずれのネブライザーについても、周囲環境内への放出の減少がみられた。振動型メッシュ式ネブライザーにより、模擬成人患者に対して最大量のエアロゾルが送達された(18.44 ± 1.03%、ジェット式ネブライザーでは 3.64 ± 0.26%)。

結論
本結果は、用手蘇生バッグを用いてエアロゾル療法の実施時に放出される一過性の治療用エアロゾルに曝露される可能性、ならびにネブライザの種類によって患者の肺への送達量に大きなばらつきがある可能性を強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
この十数年でエアロゾル療法が呼吸器疾患の治療の中心となっている。数種類の機器があり、振動型メッシュ式、ジェット式、圧力型定量吸入式、超音波式などに分類される。災害や感染症パンデミックなどの緊急事態の時には瀕死の患者に呼吸治療の代替法が必要となるが、そのひとつが用手蘇生バッグによる呼吸療法である。しかしながら、エアロゾル治療時には投与薬剤の一部が周囲環境へ放出されるという望ましくない事態が発生する。すなわち、ペンタミジンやリポソーム型シスプラチンなどの吸入治療により周囲の医療従事者へ気道過敏などの副作用が発生することがわかっているが、これらに関する研究はあまり多くない。本研究では蘇生バッグのフィルターの有用性が医療従事者保護の観点から述べられている。

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*Bern University Hospital, University of Bern, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2023) 135, 125-131


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