神経外科手術後の脳室炎のサーベイランスおよび管理★

2015.04.29

Surveillance and management of ventriculitis following neurosurgery


H. Humphreys*, P.J. Jenks
*The Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 281-286
脳室炎は神経外科手術後の重要な合併症であり、脳室ドレナージに伴うことが多い。その発現率は、用いられた診断基準が異なることなどにより 5%未満から 20%までのばらつきがある。スタフィロコッカス(Staphylococcus)属菌は最も重要な原因菌であるが、脳脊髄液サンプルからのコアグラーゼ陰性 Staphylococcus 属菌の分離は、コンタミネーションの可能性があるので解釈には注意が必要である。脳室炎のリスク因子は、高齢、脳室ドレナージ留置期間、操作回数、および脳室内出血などである。予防戦略においては、挿入または何らかの操作時の無菌操作、皮膚の処置、予防的抗菌薬投与、および脳室ドレナージ部位の適切なドレッシングなどからなるケアバンドルの実施が益々重視されるようになっている。抗菌薬含浸脳室ドレナージの使用が増加しているが、一部の研究からはこれらが有効であることが示されているものの、他の対策が遵守されている場合に追加的な有益性をもたらすかどうかは明らかではない。広く使用されている多くの薬物は脳脊髄液に浸透せず、また原因菌の多剤耐性化が進行しているため、抗菌薬治療は困難である。高用量の薬物の静脈内と脳室内への投与の併用が、特にグラム陰性菌感染の場合に必要になることが多い。この領域の大規模試験は実施が困難であることから、予防戦略に関する情報の強化や、この重要な疾患の管理を最適なものとするためには、全国的サーベイランスの継続、および治療方法と転帰のデータの蓄積が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
脳外科手術後感染症の発生率は、国ごとの診断基準の違いもあり大きく異なる。2011 年の米国の調査では、中枢神経感染症は全医療関連感染の第 10 位、0.8%を占めていた(ちなみに、第 1 位の肺炎や手術部位感染は21.8%を占める)。髄膜炎や脳室炎の頻度は少ないものの、発症すると予後に重大な影響をもたらす。本論文は過去 10 年間の論文をもとに考察しているが、感染症の予防、治療などのマネジメントに対するエビデンスは量的、質的にも十分ではないと述べている。また、サーベイランスも不十分であることから、実体の把握と多施設による臨床データの蓄積と解析が必要である。

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