オープンアクセスによりデータを共有する国内抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの開発および実施★★

2021.01.31

Development and implementation of a national antimicrobial stewardship surveillance system, with open access data sharing

  1. Ashiru-Oredope*, E.L. Budd, A. Doble, E. Cramp, A. Hendrick, S. Hopkins

*Public Health England, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 16-22

背景

Public Health England は、抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムを開発し、NHS 病院トラストにより実施される抗菌薬適正使用支援監査のデータの一元的な収集の実施可能性について調べるために、国内パイロット試験を実施した。システムは簡素化され、国民保健サービス(NHS)による抗菌薬耐性(AMR)CQUIN(Commissioning for Quality and Innovation[質の向上とイノベーションのためのコミッション];財政的なインセンティブの質改善策)の要件に焦点を置いている。

目的

国内パイロット試験による結果と使用者のフィードバック、および AMR CQUIN の一環として抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの使用による結果を提示すること。

方法

抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムを開発し、国内パイロット試験を実施したところ、33 の NHS トラストにより、システムの利用に関するデータおよびフィードバックが提出された。2016 年から 2017 年の AMR CQUIN の抗菌薬適正使用支援データを収集するために、フィードバックに基づきシステムを改良し、国内に設置した。

結果

パイロット試験に参加したトラストの大部分が、抗菌薬適応の記録に関するデータを収集した(90%)。48 時間から 72 時間以内の再検討の決定について記録したデータを収集したトラストは少なかった(36%)。平均して、患者の 83%で抗菌薬適応が記録され、一方では、患者の 71%で 48 時間から 72 時間以内の再検討に関する正式な記録があった。2016 年から2017 年の少なくとも第 1 四半期に、AMR CQUIN のデータがトラストの 88%により提出された。処方の約 92%で抗菌薬適応が記録され、処方の 87.5%で 72 時間以内の再検討の根拠が示された。これらの割合は、第 1 四半期から最終四半期の間に、それぞれ 7%ポイント、10%ポイント増加した。

結論

抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムにより、英国の NHS トラストからの抗菌薬適正使用支援監査データが一元的に収集できるようになった。Public Health England は、これらのデータを PHE Fingertips ポータル(英国公衆衛生データポータル)によりオンラインで公表する。報告されたデータは、抗菌薬処方の割合の改善とともに 72 時間以内に記録された再検討の根拠を明らかにしている。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

抗菌薬適正使用支援サーベイランスシステムの国レベルでの取り組みは、国際的に同時進行している。我が国においても、AMR リファレンスセンターを中心として様々な取り組みがなされており、耐性菌抑止のためにはフィードバックされたデータをもとにさらなる改善が求められる。

同カテゴリの記事

2021.10.31
Healthcare-associated infection impact with bioaerosol treatment and COVID-19 mitigation measures

M.H. Ereth*, J. Fine, F. Stamatatos, B. Mathew, D. Hess, E. Simpser
*Mayo Clinic College of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 69-77


2014.10.31

Routine active surveillance for carbapenemase-producing Enterobacteriaceae from rectal swabs: diagnostic implications of multiplex polymerase chain reaction

2018.11.24

Reducing the risk of iatrogenic Creutzfeldt-Jakob disease by improving the cleaning of neurosurgical instruments

2012.11.30

Postprocedural discitis of the vertebral spine: challenges in diagnosis, treatment and prevention

2008.10.15

What is left to justify the use of chlorhexidine in hand hygiene?