血管および心臓の移植片およびデバイスに関連する全身性および非全身性感染症による入院の転帰における違い:集団ベースの研究★
Differences in outcomes for hospitalizations of systemic and non-systemic infections associated with vascular and cardiac grafts and devices: a population-based study
K. Mponponsuo*, D. Chew, S. Lu, R. Somayaji, E. Rennert-May
*University of Calgary, Canada
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 828-834
背景
血管および心臓デバイスの使用が拡大しており、デバイス関連感染症の、顕著ではないが相対的な増加と関連している。
目的
心臓/血管デバイス関連感染症と、全身性感染症を有する患者と有さない患者における転帰との関連を記述すること。
方法
2016 年度 National Inpatient Sample および国際疾病分類第 10 版(ICD-10)のコードを用いて、血管および心臓デバイス関連感染症の入院患者を特定した。直線およびロジスティック回帰モデルを用いて、死亡、入院期間および入院費を転帰評価項目として、全身性感染症を有する患者と有さない患者を比較した。
結果
デバイス関連感染症に関連した入院患者は計 65,110 例で、平均年齢は 61.3 ± 15.9 歳(標準偏差)、28,650例(44%)が全身性感染症を有していた。全身性感染症患者の 91.2%で Elixhauser 併存症スコア 3 以上が認められ、糖尿病、腎疾患および心不全の有病率が高かった。主要転帰評価項目とした死亡は 3,965 例で認められ、全身性感染症を有する患者では有さない患者と比較したオッズ比は 3.97(95%信頼区間[CI]2.92 ~ 3.95)であった。全身性感染症コホートでは、平均入院期間が 3.44 日長く(95%CI 2.92 ~ 3.95)、平均医療費は 11,776 米ドル多かった(95%CI 9,826 ~ 12,727[米ドル])。
結論
心臓および血管デバイスに関連する全身性感染症は、死亡、入院期間および入院費の増加と関連した。これらの救命デバイスの使用が増加しつつあることを考えると、予防戦略を強化し、健康転帰を改善する目的で、感染性合併症、特に全身性感染症のリスクを有する患者を明らかにするために、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
心臓ペースメーカーや植え込み式除細動器、人工弁、血管内ステントや血管グラフトなどのデバイス挿入がこの十数年間で劇的に増加しており、その結果異物挿入による感染症も当然増加することとなる。起炎菌としてはブドウ球菌属による感染症、あるいは全身性感染症において、死亡率が有意に高くなることが判明した。また、糖尿病、慢性腎不全や心不全などの合併症も死亡率増加の因子となることはすでに明らかとなっている。これらのデバイスにより生活の質と予後も改善されたが、デバイス挿入後に発生する感染症、特に全身性の感染症をいかにして予防するかが大きな課題として残されている。
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