敗血症の転帰の早期指標としてのプロカルシトニン:前向き観察研究★

2011.01.31

Procalcitonin as an early indicator of outcome in sepsis: a prospective observational study


E.J. Giamarellos-Bourboulis*, I. Tsangaris, Th. Kanni, M. Mouktaroudi, I. Pantelidou, G. Adamis, S. Atmatzidis, M. Chrisofos, V. Evangelopoulou, F. Frantzeskaki, P. Giannopoulos, G. Giannikopoulos, D. Gialvalis, G.M. Gourgoulis, K. Kotzampassi, K. Katsifa, G. Kofinas, F. Kontopidou, G. Koratzanis, V. Koulouras, A. Koutsikou, M. Koupetori, I. Kritselis, L. Leonidou, A. Mega, V. Mylona, H. Nikolaou, S. Orfanos, P. Panagopoulos, E. Paramythiotou, A. Papadopoulos, X. Papanikolaou, M. Pavlaki, V. Polychronopoulos, A. Skoutelis, A. Theodotou, M. Vassiliaghou, E.E. Douzinas, C. Gogos, A. Armaganidis on behalf of the Hellenic Sepsis Study Group
*University of Athens, Medical School, Greece
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 58-63
この研究では、敗血症の転帰の予測指標としてのプロカルシトニン(PCT)の意義について検討した。前向き多施設観察研究を実施し、入院患者 1,156 例を対象として敗血症発症後 24 時間以内に血液を採取した。234 例は敗血症発症時に集中治療部門(ICU)に入室していたが、922 例は非 ICU 症例であった。血清における PCT レベルを超高感度 Kryptor 法を用いて二重盲検下で測定した。非 ICU 症例の死亡率は、PCT ≦ 0.12 ng/mL の患者は 8% であったのに対して、PCT > 0.12 ng/mL 群では 19.9% であった[P < 0.0001、死亡のオッズ比(OR)2.606、95% 信頼区間(CI)1.553 ~ 4.371]。ICU で敗血症を発症した患者の死亡率は、PCT ≦ 0.85 ng/mL の患者は 25.6% であったのに対して、PCT > 0.85 ng/mL では 45.3% であった(P = 0.002、死亡の OR 2.404、95%CI 1.385 ~ 4.171)。結論として、PCT カットオフ値は敗血症の転帰の予測に有用であり、ICU への入室が有益であることが想定される患者を特定する上で特に重要であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
プロカルシトニン(PCT)は、本来的にはカルシウム代謝を調節する甲状腺濾胞 C 細胞で産生されるペプチドホルモンであるカルシトニンの前駆体であるが、一方、細菌感染症や真菌感染症では TNF-α などの炎症性サイトカインの刺激により肺・腎・肝・脂肪・筋肉などの様々な臓器細胞によって産生される炎症マーカーである。ウイルス感染症においてはインターフェロン-γ が PCT の産生を抑制するとされており、その他、非感染性疾患では PCT の上昇は軽微であるとされることもあって、特に重篤な細菌感染症のマーカーとして PCT の有用性が期待されている。複数の論文によって血清 PCT 値は、感染症によらない全身性炎症反応症候群(SIRS)よりも敗血症(すなわち感染症による SIRS)で高いとされたが、メタアナリシスではその有用性が確認されていない。
この論文はギリシャの ICU における敗血症で血清 PCT 値の測定が有用である可能性を示しているが、どの臨床検査も必ず症例の臨床像から結果を判断するための検査前確率の把握が重要であり、単一の検査結果だけで治療方針を決定するのは無謀であると考える。テクノロジーよりも使いこなすコンセプトが重要である。

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