大学医療センターにおける再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症を有する免疫能正常患者と免疫能低下患者を対象とした停留浣腸による糞便細菌叢移植後の臨床アウトカム
Clinical outcomes after faecal microbiota transplant by retention enema in both immunocompetent and immunocompromised patients with recurrent Clostridioides difficile infections at an academic medical centre
B.D. Navalkele*, J. Polistico, A. Sandhu, R. Awali, A. Krishna, S. Chandramohan, G. Tillotson, T. Chopra
*University of Mississippi Medical Center, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 643-648
背景
医療施設において、再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)は、最も頻度が高く、治療が困難な感染症の 1 つである。確実な治療選択肢として糞便細菌叢移植(FMT)が推奨される。
方法
2015 年 1 月から 2019 年 12月に再発性 CDI に対して FMT 治療を受けた患者 50 例の後向きレビューを実施した。主要評価項目は FMT 治療後 12 週間以内の CDI 再発とし、副次的評価項目は、FMT を繰り返し行う必要性、FMT に関連する重篤な有害転帰、全死因死亡率とした。
結果
50 のカルテをレビューし、そのうち、停留浣腸により FMT 治療を受けた 47 例(うち 17 例は免疫能低下患者)を本研究の対象とした。CDI を 3 回以上再発した患者が過半数を占めた(62%)。9 例(19%)が初回 FMT 治療に反応せず、4 週間から 12 週間以内に 5 例が 2 回目の FMT 治療を受けた。初回 FMT 治療後の治癒率は 81%で(47 例中 38 例)、2 回目の FMT 治療後は 91%であった(47 例中 43 例)。90 日後の追跡調査で、重篤な有害事象の発生は 2%、全死因死亡率は 2%であった。
結論
非重症の再発性 CDI と重症の再発性 CDI の治療と予防を図るために実施した停留浣腸による FMT は、ベッドサイドでの簡単な手技であり、本研究により、その安全性と有効性(全治癒率 91%)が確認された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
米国の大学病院における糞便移植の有効性についてレトロスペクティブに調査を行った論文である。ディスカッションでも述べられているが、懸念される副作用として、提供者からの便を介した多剤耐性菌感染のリスクがある。どのようにして回避するかが、課題であろう。
同カテゴリの記事
Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in Irish critical care units: results of a pilot prevalence survey, June 2011
Pattern of exposure to information and its impact on seasonal influenza vaccination uptake in nurses
Emergence of carbapenem-resistant Enterobacteriaceae in a UK paediatric hospital
Modification in prescribing practices for third-generation cephalosporins and ciprofloxacin is associated with a reduction in meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia rate
Norovirus in the hospital setting: virus introduction and spread within the hospital environment