ジンバブエの新生児病棟における感染予防・制御に対する阻害因子および促進因子:行動変容介入をデザインするための情報を提供する理論誘導型の定性的研究★★
Barriers and facilitators to infection prevention and control in a neonatal unit in Zimbabwe – a theory-driven qualitative study to inform design of a behaviour change intervention
A. Herbeć*, G. Chimhini, J. Rosenberg-Pacareu, K. Sithole, F. Rickli, S. Chimhuya, S. Manyau, A.S. Walker, N. Klein, F. Lorencatto, F.C. Fitzgerald
*Centre for Behaviour Change, Clinical, Educational and Health Psychology, UCL, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 804-811
背景
医療関連感染は、低所得状況における新生児の病的状態/死亡の原因として増加しつつある。病院スタッフの行動(例、手指衛生)は、医療関連感染の重要な寄与因子である。これらの促進因子を理解することで、感染の予防と制御(IPC)を促進するための介入に関する情報を提供することができる。
目的
ジンバブエのハラレにある新生児病棟における IPC の阻害因子/促進因子を探索すること。
方法
新生児病棟および産科病棟のスタッフメンバー 15 名に面接を行うとともに、エスノグラフィーの手法に基づく観察を行った。面接の指針およびデータの解析は、COM-B モデル(能力・機会・動機づけ‐行動)モデルから得られる情報に基づき、個人、社会文化、および組織の各レベルにおいて IPC の阻害因子/促進因子を探索した。Behaviour-Change Wheelの枠組みを用いて、実行可能な介入を明らかにした。
結果
能力における促進因子としては IPC の意識が、動機付けとしては、IPC が各人の役割として重要であるという信念、ならびに不十分な IPC がもたらす帰結に関する懸念が含まれた。スタッフは、資源の利用可能性により(機会)、IPC が改善するという、楽観的な意見をもっていた。阻害因子には、ガイドラインに関する知識不足、成績に関する公式なフィードバック制度の欠如(能力)、資源の欠如(機会)が含まれ、行き当たりばったりの行動および不十分な習慣形成につながることが多かった。その他の阻害因子には、病棟の階層組織(例、清掃担当者や母親による IPC への関与が少ない)、ならびに他のチームメンバーによる不十分な実践に対するスタッフ観察制度(機会)が含まれた。実行可能な介入には、役割モデル、枠を超えた母親およびスタッフの関与、監査とフィードバック、ならびに柔軟なプロトコール(水・擦式手指消毒薬の利用可能性に対応できる)などが含まれるようであった。
結論
IPC の阻害因子の大半が機会の領域に含まれていた。一方、大半の促進因子は能力および動機づけの領域に含まれていた。理論に基づく研究により、低所得状況における IPC の阻害因子と促進因子に取り組むための介入を系統的に同定・開発するための基礎付けが得られる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染予防対策において手指衛生は重要な手技であるが、これを WHO が提唱する 5 つのタイミングで漏れなく実施するためには、個々の職員の行動変容が必要である。COM-B モデルは行動変容を促進するために、能力、機会、動機の 3 つからなるコンポーネントで行動を分析し、阻害因子と促進因子を明らかにすることで積極的な介入を行い、行動変容に繋げようとするものであり、2011 年に出された行動変容のための介入モデルである。このモデルを使って低所得のアフリカ・ジンバブエにおける新生児病棟における感染制御を改善するための課題を調査した研究であるが、教育とフィードバック、意識付け、手指衛生のできる環境の整備などは中・高所得の国でも共通することである。
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