血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者の疥癬に対する感受性★

2020.11.30

Susceptibility of patients receiving chemotherapy for haematological malignancies to scabies
H. Hosoi*, S. Nishikawa, Y. Kida, T. Kishi, S. Murata, M. Iwamoto, Y. Toyoda, Y. Yamada, T. Ikeda, T. Sonoki
*Kainan Municipal Medical Center, Japan
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 594-599


背景
疥癬は感染性の皮膚炎である。疥癬伝播のリスク因子は、依然として明らかでない。疥癬のアウトブレイクが、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者も含め、当院で発生した。
方法
アウトブレイク集団を分析して、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている接触患者において疥癬の発生率が高いかどうかを明らかにした。
結果
角化型疥癬患者 1 例が初発症例で、医療従事者の接触者 78 例中 18 例および接触患者 135 例中 22 例が通常疥癬と診断された。血液悪性腫瘍を有する接触患者 17 例中 10 例および他の疾患を有する接触患者 118 例中 12 例が、疥癬に感染した。感染発生率は、血液悪性腫瘍を有する患者のほうが有意に高かった(P < 0.001)。血液悪性腫瘍を有する患者は、他の疾患を有する患者と比べて、平均最小好中球数が有意に低かった(1,159/μL 対 3,761/μL、P = 0.0012)。ほとんどの血液悪性腫瘍患者は特別な看護介助を必要とせず、このことから、これらの患者で疥癬の発生率が高かったのは感染した医療従事者との接触によるのではなく、免疫不全によることが示唆された。
結論
本研究から、血液悪性腫瘍に対して化学療法を受けている患者は、他の疾患を有する患者と比べて疥癬に罹りやすく、より厳格な防御策が必要であることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
疥癬は、感染した患者の皮膚との直接的または間接的接触により感染するという経路をもつ。感染リスクについては HIV 感染症における CD4 数や長期ステロイド服用はすでに報告されているが、決して十分に検討されてるとは言えない。本論文では血液悪性腫瘍患者におけるホスト側の免疫低下、特に好中球減少とリンパ球減少がリスク因子であることが確認された。これらの血球減少の事象は、今日多くの化学療法患者において日常的に発生しており、今後注意が必要である。さらに早期診断が難しいことも施設内での感染拡大の原因となる。

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