ロンドンの教育病院に勤める医療従事者における COVID-19 の特性および伝播動態★★

2020.10.30

Characteristics and transmission dynamics of COVID-19 in healthcare workers at a London teaching hospital
C. Zheng*, N. Hafezi-Bakhtiari, V. Cooper, H. Davidson, M. Habibi, P. Riley, A. Breathnach
*St George’s University Hospitals NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 325-329


背景
医療従事者関連新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、院内感染の拡大およびスタッフ人数の枯渇をもたらす可能性があるため、世界的な懸念となっている。しかし、医療従事者における COVID-19 の伝播経路およびリスク因子に関する文献は限られている。
目的
医療従事者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の特性および伝播動態を、英国ロンドンの大学付属教育病院 1 施設において検討すること。
方法
2020 年 3 月から 4 月に、スタッフの記録とウイルス学的検査結果を組み合わせて、スタッフの疾患状態と COVID-19 発生率を明らかにした。スタッフの専門業務群、業務部門、および民族について比較した。
結果
当院の医療従事者における COVID-19 発生率は、ほぼ市中感染症例数と並行して上昇および低下していた。当院の医療従事者における白人群および非白人群では、感染発生率は同程度であった。検査で確認された COVID-19 の発生率は、臨床スタッフのほうが非臨床スタッフより高かったが、(検査未確定の疑い例も含めた)総疾患率は同程度であった。医師では感染率が最も高かったが、罹病期間は最も短かった。集中治療では救急部よりも感染率は低かったが、救急部では全スタッフに対して個人防護具(PPE)を使用するよう指示したところ、感染率が低下した。
結論
当院のスタッフにおいて、SARS-CoV-2 の持続的伝播は、非臨床区域において厳格な感染制御策が講じられていなくても、市中アウトブレイクを上回る形では発生しなかった。現行の PPE は、適切に使用されれば効果的なようである。著者らの所見は、パンデミック時には臨床スタッフと非臨床スタッフの両者に検査を行うことの重要性を強調している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
COVID-19 の感染伝播を阻止するための最良の方策は PPE の適切な着用と手指衛生であり、本論文はそれを確認した形となっている。COVID-19 の主症状は発熱と咳であるが、咽頭痛、鼻水、味覚嗅覚異常、下痢、などの通常の上気道炎や急性胃腸炎と区別できないこと、さらに発症前から感染性があることから、発症前に COVID-19 以外の疾患で救急受診した場合には、救急スタッフは感染防御が難しくなり、その結果感染しやすくなる。したがって、PPE の十分量の確保と PPE の適切な着脱は必須である。また、COVID-19 の検査が必要時に職員・患者に限らず実施できる検査体制の確保は、早期に無症状者を含め陽性者を同定することができる点で重要である。

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M.J. Sarink*, J. Pirzadian, W.A. van Cappellen, A.G.M. Tielens, A. Verbon, J.A. Severin, J.J. van Hellemond
*Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 490-494

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*Copenhagen University Hospital, Denmark
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 309-320

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