カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の病室間伝播の潜在的な発生源としてのトイレ排水

2020.10.30

Toilet drain water as a potential source of hospital room-to-room transmission of carbapenemas-producing Klebsiella pneumoniae
L. Heireman*, H. Hamerlinck, S. Vandendriessche, J. Boelens, L. Coorevits, E. De Brabandere, P. De Waegemaeker, S. Verhofstede, K. Claus, M.A. Chlebowicz-Flissikowska, J.W.A. Rossen, B. Verhasselt, I. Leroux-Roels
*Ghent University Hospital, Belgium
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 232-239


背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は欧州で急速に出現し、院内アウトブレイクに関与している。
目的
Ghent University Hospital の熱傷部門での CPE のアウトブレイク後に、CPE が排水によってトイレ間に広がり、そこから患者に伝播する可能性があるかどうかを調査した。
方法
当院の熱傷部門は、2017 年に OXA-48-産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のアウトブレイクを経験し、3 つの各病室に入院する患者 5 例が感染した。一般的な発生源を調査するために、シンク、シャワー、シャワーストレッチャー、ベッドの手すり、ナーシングカート、トイレ、排水から環境サンプルを採取した。肺炎桿菌のアウトブレイク分離株とランダムに選択した肺炎桿菌分離株 2 株の全ゲノムシークエンシングおよび系統発生解析を実施した。
結果
OXA-48-産生肺炎桿菌が、6 病室のうち 4 病室のトイレの水と 2 病室間の排水に検出された。2 か月間毎日、漂白剤による消毒を行った後も、6 病室のうち 2 病室でこの菌株が残存していた。アウトブレイクの全分離株がシークエンス型(ST)15 に属し、同質性を示した(対立遺伝子の差異 15 未満)。これは、排水により菌株が病室間に拡散した可能性があることを示唆するものである。意外なことに、ランダムに選択した分離株 1 株は、アウトブレイク分離株によるクラスターが発生した高齢者病棟に入院中に感染の 1 患者から採取されており、アウトブレイクは予想よりも広範であることが示唆される。トイレの水の消毒に、毎日の漂白剤使用は酢酸よりも優れている傾向がある。だが、トイレの水に存在するカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌は、消毒で完全に阻止されなかった。
結論
トイレ排水は、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌の院内病室間伝播の潜在的な発生源であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ベルギーの病院の熱傷部門での患者および環境から検出された OXA-48 -産生肺炎桿菌を調べた論文である。患者の移動がないにもかかわらず、2 つの部屋のトイレの排水から同質と考えられる菌が検出されていた。これまでにも同様の研究があり、環境消毒の難しさを考えさせられた。

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