米国の入院患者の便検体におけるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)および多剤耐性医療関連病原体の存在★★

2020.09.30

Presence of Clostridioides difficile and multidrug-resistant healthcare-associated pathogens in stool specimens from hospitalized patients in the USA
I.A. Tickler*, C.M. dela Cruz, A.E. Obradovich, R.V. Goering, S. Dewell, V.M. Le, F.C. Tenover, the Healthcare Associated Infections Consortium
*Cepheid, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 179-185


背景
医療関連感染症は、依然として病的状態および死亡の主要な原因である。多くの医療関連感染症の病原体は、多剤耐性病原体(MDRO)を含め、消化管に定着する。
目的
便検体中に毒素産生性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)が認められた患者と認められなかった患者において、MDRO 保菌の頻度を明らかにすること。
方法
米国の検査室 9 施設から得られた便検体を、C. difficile、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、およびカルバペネム耐性グラム陰性菌に対して選択的な培地を用いて培養を行った。検体と分離株について、PCR による検査も行った。細菌分離株に対して、感受性試験および遺伝子タイピングを実施した。
結果
便検体 363 個中 175 個において、27 の PCR リボタイプにわたる毒素産生性 C. difficile 分離株が回収された。C. difficile 陽性(TCD+)の便検体ではさらに 28 の微生物が回収され、これには 6 つのカルバペネム耐性グラム陰性菌(3.4%)(このうち 2 つ[1.1%]はカルバペネマーゼ産生菌)、19 の VRE(10.9%)、および 3 つのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)(1.7%)が含まれた。培養で毒素産生性 C. difficile 陰性(TCD-)の便検体では 26 の微生物が回収され、これには 4 つのカルバペネム耐性グラム陰性菌(2.1%)、20 の VRE(10.6%)、および 2 つの MRSA(1.1%)が含まれた。C. difficile を除いて、MDRO が回収された割合には TCD+と TCD-の検体の間で有意差はなかった。
結論
全体で、TCD+ の便検体の 15.4%および TCD- の便検体の 11.2% で、C. difficile 以外のMDRO が 1 つ以上認められ、このことから、複数の MDRO が患者の消化管(C. difficile を保有する消化管を含め)に存在する可能性が示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本論文では C.difficile の有無にかかわらず、MDRO は 10 ~ 15%の入院患者が便中に保菌しており、米国での MDRO の今後の拡がりが懸念される。また、腸管が多剤耐性菌のリザーバーとなることが示されるとともに、CD と耐性菌の腸管保菌が将来の感染症発症の際の治療困難による重症化や死亡率を増加させる可能性があることも示唆している。

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