ドイツの病院において無菌操作前の手指衛生遵守率は上昇していない:全国的なサーベイランスシステムのデータによる 4 年にわたる縦断研究★
No increase in compliance before aseptic procedures in German hospitals. A longitudinal study with data from the national surveillance system over four years
T.S. Kramer*, K. Bunte, C. Schröder, M. Behnke, J. Clausmeyer, C. Reichardt, P. Gastmeier, J. Walter
*Charité-Universitätsmedizin Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 71-75
背景
手指衛生は医療関連感染と病原体の伝播の予防において極めて重要な役割を果たしている。ドイツでは 2008 年に全国的なキャンペーンである「Aktion Saubere Hände(手指衛生行動)」が開始された。これは世界保健機関(WHO)の「清潔なケアはより安全なケア(Clean Care is Safer Care)」イニシアチブに基づく。手指衛生の遵守向上において、直接観察と結果のフィードバックは重要な要素である。直接観察した手指衛生遵守を文書化するための任意の全国的サーベイランスの電子的ツールが、2014 年に導入された。
目的
ドイツの病院において WHO のモデルである「手指衛生の5 つのタイミング」を実行後の、遵守率について記述し評価すること。
方法
訓練を受けた現地の職員が参加病院で WHO の推奨に従って直接観察を実施した。2015 年 1 月 1 日から 2018 年 12 月 31 日まで、年間で観察期間あたり 150 回以上の手指衛生の機会を報告した病棟を評価した。
結果
全体として、病院 525 施設の 3,337 病棟で観察された 1,485,622 回の手指衛生の機会が分析の対象となった。全体の遵守率は 72%(四分位範囲[IQR]61 ~ 82)から 76%(IQR 66 ~ 84)に上昇した。遵守率は WHO のモデルのタイミング 2 を除くすべての個別のタイミングで有意に上昇した。多変量ロジスティック回帰分析において、以下のパラメータ(集中治療室、看護師、2017 年または 2018 年に観察された機会、およびタイミング 2 を除くすべてのタイミング)は高い手指衛生遵守率に独立して関連していた。
結論
ドイツの病院において全体の遵守率は経時的に上昇した。「無菌操作前」の手指衛生遵守を向上させることは難しいと思われ、明確に取り組むべきである。根本的な原因を今後の調査の焦点とする必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
手指衛生の直接観察をやった者は「無菌操作前」の手指衛生がいかに難しいかを知っているだろう。「患者接触前」の手指衛生を行った後に、採血等を行う際に「もう一度」手指衛生を行うことを知らない職員は多く、また「室内に入った後で」もう一度手指衛生を行うためにはアルコールを持参するなどしなければならない。「無菌操作前」の手指衛生は、ある意味 5 つの瞬間のラスボスともいえる。
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