高齢者ケア病棟のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による環境汚染に対する過酸化水素ドライミスト発生装置による消毒システムの効果

2008.10.31

Activity of a dry mist hydrogen peroxide system against environmental Clostridium difficile contamination in elderly care wards


S. Shapey*, K. Machin, K. Levi, T.C. Boswell
*Nottingham University Hospital NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 136-141
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は重篤な医療関連感染を引き起こす。感染制御は困難であるが、その原因の1つとしてC. difficile芽胞による環境汚染が挙げられる。これらの芽胞は清掃や消毒に対して比較的耐性がある。3か所の高齢者ケア病棟で、C. difficileによる環境汚染に対する過酸化水素ドライミスト発生装置による消毒システム(SterinisR)の効果を評価した。BrazierのCCEY(シクロセリン-セフォキシチン-卵黄)寒天培地を用いて、種々の病棟および診療科の16室でC. difficileの初回サンプル採取を行った。高齢患者用の10室(隔離室8室および汚物室 2室)で、過酸化水素ドライミストによる汚染除去の後、再度サンプルを採取した。PCR法を用いたリボタイピングにより、典型的なC. difficile分離株の遺伝子型を判定した。C. difficileが回収率は、低リスク、中等度リスク、高リスクの部屋のサンプルでそれぞれ3%、11%、26%であった。高リスクの高齢者ケア室10室では、サンプルの24%(203件中48件)がC. difficile陽性であり、過酸化水素による汚染除去前のサンプル10件あたりの平均コロニー形成単位(cfu)は6.8であった。リボタイピングにより、英国の主要な流行菌株である3株(リボタイプ001、027、および106)が同定され、4室では菌株が混在していた。過酸化水素による汚染除去を1サイクル行った後には陽性サンプルは3%(203件中7件)のみとなり(P<0.001)、サンプル10件あたりのcfuは0.4となった(約94%の減少)。これらの高齢者ケア室では、過酸化水素発生装置による消毒システムSterinisRC. difficileによって環境汚染の程度が有意に低下した。この技術は比較的動作が迅速で操作が簡易であり、他の消毒剤による手動の消毒法と比較して、隔離室を洗浄剤による清掃後に最終的に消毒するうえで信頼性の高い方法と考えられる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染対策上、閉鎖空間内に消毒効果のある気体を充満させる方法は通常用いられず、高頻度接触面を中心とした清拭による消毒が基本である。しかし、本事例にみられるような広範囲のC. difficileによる汚染の場合などには、そういった方法も考慮すべきかもしれない。過酸化水素発生装置による消毒システムの有用性を示す本論文は、一読の価値があると考える。

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