緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の局地的アウトブレイクの調査におけるパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)と全ゲノムシークエンシングによるタイピングの比較では、PFGE の精度が確認される
Comparison of pulsed-field gel electrophoresis and whole-genome-sequencing-based typing confirms the accuracy of pulsed-field gel electrophoresis for the investigation of local Pseudomonas aeruginosa outbreaks
D. Martak*, A. Meunier, M. Sauget, P. Cholley, M. Thouverez, X. Bertrand, B. Valot, D. Hocquet
*Centre Hospitalier Régional Universitaire, France
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 643-647
目的
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)をモデルとして、全ゲノムシークエンシング(WGS)による技術で明らかにされたクラスターに属する分離株が、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)により正確に認識されるかどうかを確認すること。
方法
1998 年から 2012 年に欧州の 7 つの病院で分離された ST395 P. aeruginosa 分離株 65 株を選択した。分離株を PFGE によりタイピングし、WGS により配列を決定した。3,831 の遺伝子を用いたコアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)解析を、独自のパイプラインを用いて実施した。
結果
PFGE により 8 つの pulsotype が同定され、cgMLST により 9 つのクラスターおよび 9 つの singleton が識別された。cgMLST による 5 つのクラスターと pulsotype(65 株中 31 株)は完全に一致した。PFGE により分類された明白な疫学的関連がない分離株が、部位を識別する cgMLST により分離された(65 株中 16 株)。これより、局地的アウトブレイクの調査に PFGE を続行すべきであることが示唆される。さらに重要な点は、高頻度突然変異分離株は、その親株と pulsotype が同一であったが(65 株中 16 株)、cgMLST では認識されなかった。これは、緑膿菌の蔓延時に生じる遺伝的浮動の加速による影響が、PFGE では、WGS によるタイピングよりも少なかったことを示している。
結論
WGS によるタイピングは論理的に新たな参照基準になっているが、本研究では、緑膿菌に起因する局地的アウトブレイクの調査のために、PFGE を確信をもって使用できることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MLST 法は比較的広域の流行株把握に適し、ローカルな流行株の特徴把握は PFGE 法が適している。
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