単回使用マスクの汚染除去に関するエビデンス★★

2020.08.31

Evidence for decontamination of single-use filtering facepiece respirators
A. Polkinghorne*, J. Branley
*New South Wales Health Pathology, Australia
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 663-669


上気道病原体保有が疑われる患者を治療する医療従事者にとって、単回使用マスクは重要な個人防護具である。2000 年代のパンデミック時の経験や、SARS-2-CoV-2 による 現在進行中である COVID-19 パンデミックは、呼吸器系ウイルスの長期的なパンデミックによる、世界的なマスク供給におよぼす重圧への懸念を浮き彫りにしている。マスクの汚染除去は、マスクの再使用を支持する 1 つの解決策とされており、汚染マスクの消毒効果に加えて汚染除去プロセスがマスクの性能に及ぼす影響についても検討を開始している文献が、過去 10 年以上にわたり増加傾向にある。物理的・化学的な汚染除去法は、紫外線照射による殺菌、蒸気滅菌、エチレンオキサイド、過酸化水素蒸気によるマスク処理について試験されており、これまでのところ、もっとも有望な結果が示されている。マスクの汚染除去のために、病院ですでに利用できる可能性があり、再利用されうる既存の設備が、これらの方法の多くで活用される。重要な点は、方法によっては家庭用器具でも再現でき、マスクの汚染除去の有用性が、医療環境以外にも広がることである。さまざまな微生物でマスクを実験的に汚染する技術を使用した場合、ほとんどの汚染除去法により、着用者および他者への感染源としてのマスクのリスクが無視できるレベルまで低減するようである。とはいえ、フィルターの性能、とくに処理後の粒子透過率は、処理法およびフィルター自体の型によって大きく異なる。マスクのルーチンでの汚染除去を支持するために、規制当局支援による緊急調査が必要である。緊急事態におけるこれらの方法は、医療従事者に起こりうるマスクの供給不足に対処する一戦略として、やはり慎重に検討すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
呼吸器防護具の再生処理を行う際に注意すべきは、病原体を確実に不活化できるか(消毒レベルより滅菌レベルが望ましい)、病原体不活化処理により吸器器防護具のもつフィルター性能が劣化しないか、病原体不活化処理により呼吸器防護具の素材に有害物質が吸着しないかなどに注意を払う必要がある。

同カテゴリの記事

2009.12.31

Pseudomonas aeruginosa: a formidable and ever-present adversary

2008.06.30

Staff perception and institutional reporting: two views of infection control compliance in British Columbia and Ontario three years after an outbreak of severe acute respiratory syndrome

2016.03.01

Nursing care as a predictor of phlebitis related to insertion of a peripheral venous cannula in emergency departments: findings from a prospective study

2019.01.05

Molecular characterization of a nosocomial outbreak of influenza B virus in an acute care hospital setting

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ