紫外線照射殺菌による多剤耐性病原体カンジダ・オーリス(Candida auris)の不活化
Inactivation of the multi-drug-resistant pathogen Candida auris using ultraviolet germicidal irradiation
A.R. Lemons*, T.L. McClelland, S.B. Martin, W.G. Lindsley, B.J. Green
*National Institute for Occupational Safety and Health, Centers for Disease Control and Prevention, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 495-501
背景
カンジダ・オーリス(Candida auris)は多剤耐性の病原性真菌であるが、世界的に医療環境における新たな脅威となっている。医療環境で一般的に用いられている化学消毒薬の C. auris に対する不活化効果にはばらつきがあることが示されているため、特に C. auris を不活化するためにデザインされた信頼できる消毒プロトコールが必要である。
目的
紫外線照射殺菌について、臨床的に重要な C. auris 株を不活化するための方法として検討した。
方法
C. auris 分離株 10 株およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)分離株 2 株を、紫外線エネルギーに曝露させ、それぞれの分離株を不活化するために必要となる紫外線線量を明らかにした。紫外線リアクターを用いて、各分離株(106 個/mL)を 10 ~ 150 mJ/cm2 の範囲にわたる 11 種類の線量の紫外線に曝露させ、細胞の生存を評価するために培養を行った。
結果
指数関数的減衰モデルを各線量反応曲線に適用して、各分離株について不活化速度定数を算出したところ、C. auris では0.108 ~ 0.176 cm2/mJ の範囲、C. albicans では 0.239 ~ 0.292 cm2/mJ の範囲であった。指数関数的減衰モデルでは 99.9%を超える不活化について正確な推定はできなかったため、ロジスティック回帰モデルを適用して、99.999%の不活化に必要となる線量についてより正確な推定を行った。このモデルを用いたところ、C. auris(103 ~ 192 mJ/cm2)の不活化には C. albicans(78 ~ 80 mJ/cm2)の不活化よりも有意に大きな紫外線エネルギーが必要となった。
結論
紫外線照射殺菌は C. auris の不活化に実施可能な方法であるが、分離株による感受性の違いを考慮に入れなければならない。今回の線量反応データは、医療環境において検証するための紫外線照射殺菌における照射線量に関する戦略を推奨する上で極めて重要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本においては Candida auris の報告がまれであることや、紫外線照射殺菌装置が普及していないことを考慮すると現時点では重要性は高くないが、今後の動向によっては重要度が高くなる可能性がある。
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