急性期病院の多数の患者・医療従事者・環境のサンプル採取により明らかにされた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の有意なリザーバである口腔内
The oral cavity revealed as a significant reservoir of Staphylococcus aureus in an acute hospital by extensive patient, healthcare worker and environmental sampling
A. Kearney*, P. Kinnevey, A. Shore, M. Earls, T.T. Poovelikunnel, G. Brennan, H. Humphreys, D.C. Coleman
*Dublin Dental University Hospital, University of Dublin, Ireland
Journal of Hospital Infection (2020)105, 389-396
背景
近年、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)血流感染症の発生率が着実に増加しており、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による血流感染症の発生率は著しく低下している。MSSA 保菌のスクリーニングはルーチンに実施されておらず、MRSA スクリーニングは全症例に対するものではない。したがって、院内環境における黄色ブドウ球菌の保菌圧の程度は不明である。
方法
3 次紹介病院の 9 つの入院病棟の患者および医療従事者を対象に、前向き観察研究を 2 年間にわたり実施した。参加者には、鼻腔スワブと含嗽液により MSSA と MRSAのスクリーニングを実施した。接触培地と能動的エアサンプリングにより環境表面と空気中の黄色ブドウ球菌も測定した。
結果
患者 388 例、医療従事者 326 名を登録し、接触培地での表面サンプル 758 個、空気サンプル 428 個を採取した。MSSA は、患者の 24%、医療従事者の 31.3%、空気サンプルの 16%、表面サンプルの 7.9%から回収された。MRSAは、患者の 6.4%、医療従事者の 3.7%、空気サンプルの 2.5%、表面サンプルの 2.2%から回収された。サンプリング法として前鼻孔のほかに口腔を加えたことで、口腔内保菌のみを示す患者が 30 例、医療従事者が 36 名特定された。
結論
現時点では十分に評価されていない口腔内は、院内黄色ブドウ球菌の重要なリザーバである。医療施設における保菌圧と個々の患者レベル(とくに、除菌の試みと失敗を繰り返している患者、リスクの高い手技を受けている患者)の両方の観点から口腔スクリーニングを検討すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA の慢性保菌者のスクリーニングのための監視培養を行う部位としては鼻前庭が最も適す。入院中の患者で医療者が介助し各種処置を行うことで口腔内にも一過性に検出されるが、汚染菌である可能性も高いために基本は鼻前庭部位からの監視培養で確認が必要である。
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