高齢者における肺炎後のクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostoridioides difficile)感染症:どの抗菌薬でリスクがより低いか?
Clostridioides difficile infection after pneumonia in elderly patients: which antibiotic is at lower risk?
P. Bonnassot*, J. Barben, J. Tetu, J. Bador, P. Bonniaud, P. Manckoundia, A. Putot
*Hospital of Champmaillot, University Hospital, France
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 527-533
背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostoridioides difficile)感染症(CDI)は、急性肺炎で入院して抗菌薬療法を受けている高齢者において、高頻度でみられる重度の合併症である。
目的
CDI の疾患負担とリスク因子について評価すること、また通常の抗菌薬レジメンのうちのどれが、急性肺炎後の CDI 発症リスクをより減らすことができるかを明らかにすること。
方法
2007 年から 2017 年までの間に、大学病院 1 施設の全病棟において急性肺炎で入院した75歳超の患者のうち、CDI を発症した患者全 92 例を、CDI を発症しなかった患者 213 例と比較した。以下と関連する因子について、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した(i)院内および 1 年死亡率、(ii)CDI 発生率。
結果
急性肺炎後に CDI を発症した患者としなかった患者において、院内死亡率はそれぞれ 34% および 20%、1 年死亡率はそれぞれ 63% および 42% であった。交絡因子を補正したところ、CDI は肺炎後の院内死亡および 1 年死亡のリスクが 2 倍になることと関連した(それぞれ、オッズ比[OR]1.95、95%信頼区間[CI]1.06 ~ 3.58、および OR 2.02、95%CI 1.43 ~ 7.31)。抗菌薬の数が多いこと(抗菌薬当たりOR 1.89、95%CI 1.18 ~ 3.06)の方が抗菌薬投与期間(1 日当たり OR 1.04、95%CI 0.96 ~ 1.11)よりも、CDI のリスク上昇と関連した。他の抗菌薬と比較して、ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬が、CDI 発症リスクの低下と関連した(OR 0.43、95%CI 0.19 ~ 0.99)。
結論
高齢入院患者において CDI により、短期的および長期的に急性肺炎の疾患負担が大幅に増加した。もし確認されれば今回の結果は、急性肺炎の高齢患者において CDI の発症を抑えるための治療としてペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬の使用が望ましいことを示唆している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CDI 患者は病院内死亡率が34%、1 年以内死亡率が 63%と高かった。CDI の危険因子として効菌薬の投与期間よりも抗菌薬の数の方が重要であった。また抗菌薬種別の検討ではβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬使用患者で CDI のリスクが低かった。以上は CDI の研究でよくある結果であるが、抗菌薬の数が危険因子であることや特定の抗菌薬のリスクの大小は参考になるかもしれない。
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