新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の院内伝播リスク:香港の一般病棟環境における経験

2020.06.30

Risk of nosocomial transmission of coronavirus disease 2019: an experience in a general ward setting in Hong Kong
S.C.Y. Wong*, R.T-S. Kwong, T.C. Wu, J.W.M. Chan, M.Y. Chu, S.Y. Lee, H.Y. Wong, D.C. Lung
*Queen Elizabeth Hospital, Hong Kong Special Administrative Region
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 119-127


背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019 年 12 月に中国武漢市で最初に報告され、中国の国内外さまざまな都市に急速に拡散した。香港は 2019 年 12 月 31 日に COVID-19 への備えを開始し、医療施設内の院内伝播を抑えるために、公立病院における感染制御策を強化した。とはいえ、病院環境の COVID-19 に必要な感染経路別予防策に関する推奨は、飛沫・接触予防策から、空気感染隔離室に患者が入室した場合の接触・空気予防策までさまざまである。
目的
COVID-19 が診断される前に一般病棟の開放病室で治療を受けていた 1 例の患者を発端としたアウトブレイクの調査について述べること。
方法
接触者を確認し、検疫もしくは医学的サーベイランス、またはその両方での決定に際して、リスクを「濃厚」または「非濃厚」と分類した。サーベイランス期間に発熱もしくは呼吸器症状、またはその両方がみられた接触者から呼吸器検体を採取し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査を実施した。
結果
接触者追跡により、職員 71 名、患者 49 例が確認され、職員 7 名と患者 10 例が「濃厚接触者」の基準に合致した。28 日間のサーベイランスの終了時点で、接触者 52 例において 76 回の検査が実施されており、すべて陰性で、濃厚接触の患者全員と、濃厚接触の職員 7 名のうち 6 名も含まれた。残りの接触者はサーベイランス期間を通して無症状であった。
結論
調査結果から、SARS-CoV-2 は空気感染経路により蔓延しないことが示唆され、院内伝播は、サージカルマスク着用、手指衛生、環境衛生など基本的な感染制御策を注意深く実施することによって予防できる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SARS-CoV-2 の伝播経路については、エアロゾルの発生する処置を行った際のエアロゾル感染についてリスク評価が必要となる。患者の咳嗽だけでなく医療処置行為にはエアロゾルを発生させるものが多く注意を要する。

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