抗菌薬適正使用支援における教育の役割

2020.06.30

The role of education in antimicrobial stewardship
J. Satterfield*, A.R. Miesner, K.M. Percival
*University of Iowa College of Pharmacy, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 130-141


医療機関において抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)の役割が拡大している。ASP 介入には教育的要素がしばしば含まれるが、現行のガイドラインでは、教育的介入は単独で使用すべきではなく、他の管理介入を支援するために使用すべきであると勧めている。教育的介入は処方者(一般医が多い)に向けて実施されることがもっとも多く、他の医療従事者に向けて(薬剤師、看護師、あるいは適正使用支援チームのメンバーにおいても)教育を提供する研究は少ない。教育的介入の実施頻度はもっとも高いが、単独ではなく、早期モニタリングとフィードバックなどの管理介入が同時に行われる。このような対策は、処方行動に良い影響を及ぼすようであるが、教育の効果を他の介入から離すことはできない。一般的な教育方法には、1 回限りのセミナー、オンラインでの e ラーニングモジュールなどがあるが、ソーシャル・メディア・プラットフォーム、教育的なビデオゲーム、問題解決型学習モジュールなどユニークな対策も採用されている。患者に対する教育は、院内処方者の教育および処方に影響を及ぼす地域密着型のより広範な取り組みと連動して行われることが多い。このような患者教育を評価する研究では、受動的な教育用小冊子がよく用いられ、上気道感染症の適切な治療に主眼が置かれることがもっとも多い。教育的介入は、ASP のその他の介入に不可欠な要素であると考えられるが、地域の公衆衛生介入の枠外で、単独の介入として使用を支持するエビデンスは不足している。今後の研究では、ASP 活動における教育のより広範な役割を明らかにするために、処方者以外への教育および上気道感染症以外の病態も対象とした教育的介入の有効性について重点的に取り組むべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染症診療における抗菌薬の適正使用は、予防的抗菌薬処方・経験的治療・臓器や検出病原菌の種類や薬剤感受性情報に基づく抗菌薬療法選択など多岐にわたる。そのため、短時間の教育で賄える教育プログラムには限界があり、適正使用支援プログラムの必要性がでてくる。

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