抗菌薬耐性菌による医療関連感染症の直接医療負担:中国からの経験的エビデンス
Direct medical burden of antimicrobial-resistant healthcare-associated infections: empirical evidence from China
X. Liu*, D. Cui, H. Li, Q. Wang, Z. Mao, L. Fang, N. Ren, J. Sun
*Wuhan University, China
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 295-305
背景
抗菌薬耐性と医療関連感染症は、グローバルな公衆衛生上の最大の課題に含まれ、広範に重なり合っている。こうした感染症は、多くの病的状態と死亡をもたらし、医療システムに負担を与え、直接費用および間接費用の増大をもたらしている。
目的
本研究では、中国の公立 3 次病院において、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症に起因する直接医療負担の分析を行い、規制当局担当者と病院管理者の両者に対して、医療関連感染症の制御および抗菌薬耐性の封じ込めをよりよく行うための情報を提供することを目的とした。
方法
傾向スコアマッチング(γ = 0.25σ、近傍法による 1:1 マッチング)を適用して、2013 年から 2015 年の期間に、中国湖北省の公立 3 次病院 5 施設において後向きコホート研究を実施した。記述分析、Pearson のχ2検定、Mann-Whitney のU 検定、Wilcoxon の符号順位検定、ならびに対のある/独立 2 群の Z/T 検定を実施した。統計学的有意性レベルを P < 0.05 に設定した。
結果
2013 年から 2015 年にかけて全体で、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症による入院患者当たりの総超過医療費は、非医療関連感染症の入院患者に対して 15,557.25 米ドルであり、抗菌薬耐性菌による医療関連感染症による入院患者当たりの総超過入院期間は、非医療関連感染症の入院患者に対して 41 日であった(P < 0.001)。
結論
抗菌薬耐性が関与すると、医療関連感染症による超過医療費は増大し、病院のベッド回転率に影響を及ぼす。医療費増大の大部分は、患者とその家族の負担となる。これらの結果は、より効果的な医療関連感染症の制御と抗菌薬耐性の封じ込めの必要性を示している。抗菌薬耐性が関与する医療関連感染症の医療、社会および経済における負担を推定するには、全国的な研究が必要とされる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療関連感染は、医療安全上の大きな課題であり、そこに耐性菌が加わると、合併症や死亡率に大きく影響し、ひいては膨大な医療コスト増加につながることは全世界の共通した事実であり、認識でもある。本論文は、中国湖北省のにおける1,000 ~ 2,000床の 5 つの公的病院を対象として、点有病率調査を実施し、耐性菌による医療関連感染症がもたらす超過医療費と入院延長のマイナス面を指摘したものである。中国の医療全体を代表しているものではないものの、たとえ医療体制が異なっていても、耐性菌による医療関連感染のもたらす結果、すなわち医療費増大は共通である。
同カテゴリの記事
Factors influencing the cost of prosthetic joint infection treatment
Hospital outbreak of atypical mycobacterial infection of port sites after laparoscopic surgery
Usefulness of the Bristol Stool Form Chart scoring system for the laboratory processing of faecal samples in suspected Clostridioides difficile cases
R.A. Corrigan*, K. Sithamparanathan, C. Kenny, T.H.N. Wong
*Stoke Mandeville Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 95-97
Using a PDSA cycle of improvement to increase preparedness for, and management of, norovirus in NHS Scotland
Towards changing healthcare workers’ behaviour: a qualitative study exploring non-compliance through appraisals of infection prevention and control practices