クリミア・コンゴ出血熱ウイルスに起因する院内感染

2020.05.23

Nosocomial infections caused by Crimean-Congo haemorrhagic fever virus
K. Tsergouli*, T. Karampatakis, A-B. Haidich, S. Metallidis, A. Papa
*Aristotle University of Thessaloniki, Greece
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 43-52


クリミア・コンゴ出血熱は急性熱性疾患であり、出血症状を伴うことが多く、症例致死率が高い。原因病原体はクリミア・コンゴ出血熱ウイルスであり、主にダニの刺咬・ウイルス血症の患者や家畜の血液または組織の曝露によってヒトに伝播する。ヒトからヒトへの伝播は、通常は病院環境で起こり、医療従事者が主に感染する。病院環境におけるクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの伝播の経路および環境を明らかにするために、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスの院内感染に関するレビューを実施した。
1953 年から 2016 年に、アフリカ、アジア、ヨーロッパの 20 か国において、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる院内感染症例 158 例が報告されている。ほぼ全例(92.4%)が有症状で、全体の症例致死率は 32.4%であった。大多数の症例(92.0%)は病院外来で感染し、10 例(8.0%)は検査室で感染した。症例の大半が医療従事者(86.1%)において発生し、面会者(12.7%)、入院患者(1.3%)と続いた。感染率が最も高い医療従事者は、看護職員(44.9%)、医師(32.3%)で、次いで検査室職員(6.3%)であった。主要な伝播経路は経皮的接触(34.3%)であった。皮膚への接触が症例の 22.2%を占め、エアロゾルへの曝露(近接)(18.2%)、間接的接触(17.2%)、患者環境への曝露(8.1%)と続いた。
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスは、症例致死率が高い院内感染症を引き起こす可能性がある。クリミア・コンゴ出血熱患者のケアおよび治療の期間に、標準的な接触予防策、バリア予防策、空気予防策を適用すべきである。患者の安全性を改善し、医療関連クリミア・コンゴ出血熱ウイルス曝露を減らすためには、クリミア・コンゴ出血熱が鑑別診断に適切に加えられるように、医療従事者向けのガイドラインおよび教育が必要である。これにより、早期診断と感染予防策の実施が可能になるであろう。
サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなど致死性出血熱ウイルスの患者対応は、万全の防護具体制が求められるが、地理的にアフリカでも酷暑の地域で発生した場合、どうしてもPPEの運用がおろそかになりがちである。インフラも劣悪なため、対応には限界がある。

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