肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)遺伝子獲得の危険因子および複数の菌種による臨床転帰★
Risk factors for Klebsiella pneumoniae carbapenemase (KPC) gene acquisition and clinical outcomes across multiple bacterial species
A.J. Mathers*, K. Vegesana, I. German-Mesner, J. Ainsworth, A. Pannone, D.W. Crook, C.D. Sifri, A. Sheppard, N. Stoesser, T. Peto, A.S. Walker, D.W. Eyre
*University of Virginia Health System, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 456-468
緒言
カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目獲得/感染症の危険因子および関連する臨床転帰は、菌種特有のクローン性アウトブレイクとの関連で評価されている。複雑な複数の菌種によるアウトブレイクの頻度が増加しつつあり、対応する分析は不足している。
方法
カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の厳密なスクリーニングプログラムにもかかわらず、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生菌の複数の菌種の伝播が蔓延している米国の大学医療センターおよび長期急性期ケア病院の入院患者の電子カルテを用いて、KPC 産生菌獲得に関する症例対照研究を 2010 年 12 月から 2017 年 1 月に実施した。症例は、入院して 48 時間経過後に 培養でKPC 産生菌の初回陽性が確認された患者で、保菌者および感染者(カルテにより決定)を含めた。対照は、直腸周囲の KPC 産生菌スクリーニングで少なくとも 2 回培養陰性で、培養陽性が確認されなかった患者とした。KPC 産生菌獲得の危険因子、獲得後の初回感染症、各感染症発症後の 14 日死亡率について、多変量ロジスティック回帰分析により特定した。
結果
症例 303 例(89 例が 1 回以上の感染症を発症)および対照 5,929 例において、KPC 産生菌獲得の危険因子は、入院の長期化、輸血、複雑な胸部病変、機械的換気、透析、カルバペネム系薬・βラクタム/βラクタマーゼ阻害薬への曝露であった。1 カ所の部門において、他の KPC 産生菌保菌患者への曝露が獲得の唯一の危険因子であり、患者間の直接伝播は重要な影響を及ぼさないことが示唆された。15 菌種の KPC 産生菌が認められ、61 例(20%)で 2 種以上の菌種の保菌/感染症がみられた。尿路以外の KPC 産生菌感染後の 14 日死亡率は 20%(感染症発症 97 例のうち 20 例)で、感染源制御を達成できなかったことと関連した。
結論
医療との接触、抗菌薬、侵襲的手技が、KPC 産生菌の保菌/感染症のリスクを高めており、これらは、複数の菌種のアウトブレイクに対する感染制御介入のターゲットの候補となることが示唆される。患者間伝播のエビデンスは限られていた。
監訳者コメント:
KPC 産生菌獲得に関する症例対照研究を行った論文である。症例と対象の設定、検討する項目、解析など、自施設での実施に参考になると思われた。
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