直腸スワブからのカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の直接スクリーニングにおけるポリメラーゼ連鎖反応検査の評価:診断法に関するメタアナリシス Evaluation of polymerase chain reaction assays for direct screening of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae from rectal swabs: a diagnostic meta-analysis

2020.03.31

R. Saliba*, L-S. Aho-Glélé, D. Karam-Sarkis, J-R. Zahar
*Université Paris 13, France
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 381-389


分子アッセイは、陽性となった血液培養からの直接的なカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の迅速検出において信頼度が高く、病原体同定に要する時間が大幅に短縮することが、近年実証されている。直腸スワブに分子アッセイを用いる場合の性能について検証した研究はほとんどなく、感染制御における分子アッセイの有用性に関して包括的な結論は得られていない。本研究の目的は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて直腸スワブから CPE を検出する方法について、診断検査としての全般的な正確度に関するレビューと評価を行うことであった。電子データベースである PubMed を 2019 年 10 月 1 日までの期間で検索を行い、言語の制限および発表日の制限は行わなかった。まず、研究の論点についての概念を明確化し、「カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌」、「遺伝子検査」、「検査による検出」および「直腸スクリーニング」とした。2 名の評価者が独立して、研究のスクリーニング、データの抽出、および QUADAS-2 ツールを用いた質の評価を行った。統計解析については、Stata ソフトウェアを用いて二変量解析を行った。全体で、143 報の論文のスクリーニングを行い、16 報を解析対象とした。対象論文中 5 報(31%)が、CPE アウトブレイクを背景に実施された研究であった。1 報の研究(6%)は、他の臨床検体(血液または気道分泌物)から CPE が事前に検出されていた患者を組み入れていた一方、それ以外の研究(63%)は保菌のリスクが高いとみなされた患者から直腸スワブを採取していた。評価対象とした分子アッセイは、感度は 0.95(95%信頼区間[CI]0.902 〜 0.989)と比較的良好で、特異度は 0.994(95% CI 0.965 〜 1)と優れていた。遺伝子検査法は、それまで隔離されていなかった入院患者が予期せずキャリアと判明した場合、周囲の患者もCPE のキャリアであるかどうかスクリーニングを行う上で、有用で正確度の高い診断ツールと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
採取が容易な直腸スワブを用いて、CPE を信頼度高く検出できるかは、関心の高いところであろう。便中の菌量・遺伝子量、遺伝子検査手法と感度、対象とする遺伝子領域の違いによって、左右されるところが大きいと考えられるが、研究結果の集積のみならず、それらの包括的な解析と、研究の方向性の調整ならびに実用上の検討もまた、重要と言える。

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