院内発症医療関連クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症のリスクに、地域社会での抗菌薬曝露が及ぼす残留影響:リンクさせた国内データによる症例対照研究★
Residual effect of community antimicrobial exposure on risk of hospital onset healthcare-associated Clostridioides difficile infection: a case-control study using national linked data
J. Pan*, K. Kavanagh, C. Marwick, P. Davey, C. Wuiff, S. Bryson, C. Robertson, M. Bennie
*University of Strathclyde, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 259-267
背景
地域社会での抗菌薬曝露と市中獲得クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CA-CDI)との関連は十分に立証されているが、医療関連 CDI(HA‐CDI)との関連は、それほど明らかにされていない。本研究では、地域社会での抗菌薬処方と HA‐CDI との関連を推定する。
方法
CDI 症例、地域社会処方箋、および入院について網羅されている国内の 3 つの患者データセットをリンクさせて、マッチングによる症例対照研究を実施した。確証が得られた HA‐CDI 全症例(2010 年 8 月 から 2013 年 7 月)を抽出し、性別、年齢、病院、入院日に基づいて、病院ベースの 3 つの対照群を症例群とマッチさせた。地域社会での抗菌薬処方と HA‐CDI との関連を推定するために、条件付きロジスティック回帰分析を実施した。計測されていない院内抗菌薬処方の影響を検討するために、感度分析を実施した。
結果
院内発症の HA‐CDI 新規症例で、初回入院前の 12 週間に退院歴のない 930 例が、マッチさせた 1,810 例と関連付けられた。地域社会での抗菌薬処方歴のない患者に対して、処方歴のある患者における HA‐CDI のオッズ比(OR)は 1.41(95%信頼区間[CI]1.13 ~ 1.75)であった。リスクの高い抗菌薬(セファロスポリン系薬、クリンダマイシン、アモキシシリン・クラブラン酸カリウム合剤、またはフルオロキノロン系薬)に曝露された患者の OR は 1.86(95%CI 1.33 ~ 2.59)であった。計測されていない院内処方の影響の可能性を調整後も、地域社会での曝露(とくに、リスクの高い抗菌薬)が依然として HA‐CDI リスクの増大と関連した。
結論
地域社会での抗菌薬曝露は、HA‐CDI の独立危険因子であり、病院で下痢を発症した患者に対するリスク評価の一部とみなすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
入院前過去半年間の、市中での抗菌薬投与と医療関連クロストリジウム・ディフィシル感染症発症リスクを検討した論文である。CDI 発症リスクが高いとされる 4 種類の抗菌薬を外来で投与することが入院中の CDI 発症に影響することが示された。入院中の抗菌薬投与だけでなく、外来処方のモニタリングも含めた AMR 対策の重要性を痛感させる論文である。
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