脊椎手術における予防抗菌薬投与:単回投与と 72 時間投与プロトコールの比較★

2019.11.05

Antibiotic prophylaxis in spine surgery: a comparison of single-dose and 72-hour protocols


A. Maciejczak*, A. Wolan-Nieroda, M. Wałaszek, M. Kołpa, Z. Wolak
*St Lukas Hospital, Poland
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 303-310
背景
脊椎インストゥルメンテーション手術における予防抗菌薬単回投与の使用に関して一般的なコンセンサスがあるにもかかわらず、この方法を裏付けるエビデンスは強固ではない。
目的
前後比較研究によって、脊椎インストゥルメンテーション手術における手術部位感染症(SSI)予防のための予防抗菌薬の単回投与と 72 時間投与プロトコールの有効性を比較すること。
方法
2003 年から 2014 年の間に 1 つの脳神経外科で脊椎手術を受けた患者 5,208 例に関し、前向き非無作為化コホート研究を行った。脊椎インストゥルメンテーション手術における予防抗菌薬投与の 2 つのプロトコール(単回投与プロトコール[2003 年から 2008 年]および 72 時間投与プロトコール[2009 年から 2014 年])を比較した。インストゥルメンテーションを用いない脊椎手術を受けた患者は、両方の期間を通して予防抗菌薬の単回投与を受けた。評価項目は SSI の発生率とした。
結果
脊椎インストゥルメンテーション手術に関して、SSI の発生率は単回投与プロトコールでは 5.3%、72 時間投与プロトコールでは 2.2%であった(P < 0.01)。インストゥルメンテーションを用いない脊椎手術に関して、SSI の発生率は 0.8%(2003 年から 2008 年)および 1.2%(2009 年から 2014 年)であった(P = 0.054)。インプラントを用いる手術において、予防抗菌薬単回投与は 7.1%の SSI リスクを伴っており、予防抗菌薬の 72 時間投与を受けた患者の SSI リスクのほうが低い(3.6%)ということが、多重対応分析によって示された。
結論
我々の研究班において、データの個別のカテゴリーの分析により、予防抗菌薬の 72 時間投与は創感染リスクを最小限にするために最も重要な因子であることが示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
脊椎インストゥルメンテーション手術における周術期抗菌薬の投与期間についてのコホート研究であり、72 時間投与が SSI の発生率を優位に下げるとのことである。一方で、北米脊椎学会や欧州 CDC では単回投与がガイドラインで推奨されている。日本では「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」が日本化学療法学会・日本外科感染症学会から出されており、これによると脊椎インストゥルメンテーション手術では、48 時間以内とされているが、その推奨度は C1-Ⅲで、専門家の意見として科学的根拠はないが勧められる、としている。脊椎インストゥルメンテーション手術における SSI と周術医抗菌薬投与期間についてはさらなら検証が必要である。

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