オランダにおける手術部位感染症の負荷:費用分析と障害調整生存年数

2019.11.05

Burden of surgical site infections in the Netherlands: cost analyses and disability-adjusted life years


M.B.G. Koek*, T.I.I. van der Kooi, F.C.A. Stigter, P.T. de Boer, B. de Gier, T.E.M. Hopmans, S.C. de Greeff, on behalf of the Burden of SSI Study Group
*National Institute for Public Health and Environment (RIVM), the Netherlands
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 293-302
背景
手術部位感染症(SSI)は罹患率、死亡率および費用に関連している。
目的
オランダでの結腸切除術、乳房切除術および人工股関節全置換術後の、費用と障害調整生存年数における(深部)SSI の負荷を明らかにすること。
方法
オランダの SSI サーベイランスネットワークである PREZIES の 2011 年のデータを使用して、後向きの費用分析を実施した。SSI を有する曝露患者 62 例を、SSI を有さない非曝露患者(同種の手術)122 例とマッチさせた。患者記録は SSI の診断後 1 年まで調査対象とした。非曝露患者も同じ期間追跡した。費用は病院の観点(2016 年の物価水準)から算出し、費用の差は線形回帰分析を用いて検討した。疾患負荷は欧州疾病予防管理センターの欧州感染症負荷ツールキットを用いて推定した。SSI モデルは、可能であれば国および手術に固有のパラメータとともに、手術の種類によって指定した。
結果
SSI あたりの帰属原価は、21,569 ユーロ(人工股関節全置換術)、14,084 ユーロ(結腸切除術)および 1,881 ユーロ(乳房切除術)であり、主に入院期間の延長に起因していた。オランダの病院費はそれぞれ、1,000 万ユーロ、2,900 万ユーロ、60 万ユーロであった。オランダの疾患負荷は結腸切除術後の SSI に対して最大であるのに対し(障害調整生存年数は 3,200/年、150/SSI 100 件)、個人の疾患負荷は人工股関節全置換術後に最大であった(障害調整生存年数は 1,200/年、250/SSI 100 件)。乳房切除術に対するこれらの障害調整生存年数は 1 未満であった。3 種の手術に対する障害調整生存年数の総費用は 8,800 万ユーロを上回った。
結論
手術の種類に応じて、SSI は経済的にも、また完全に健康な年数の損失においてもかなりの負荷をもたらす。このことにより適切な感染予防策の重要性が明確に示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
オランダにおける 3 種類の手術の SSI の負荷について検証している。本研究のように、医療費や生存年数などで定量的に評価することにより、その影響が可視化され、重要性が理解される。特に障害調整生存年数(DALYs)を用いた医療関連感染症の評価は日本ではまだあまり行われておらず、検討の余地があるだろう。

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