アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の保菌または感染に対するクロルヘキシジン浴の効果:システマティックレビューとメタアナリシス

2019.11.05

Effect of chlorhexidine bathing on colonization or infection with Acinetobacter baumannii: a systematic review and meta-analysis


C.-Y. Fan*, W.-T. Lee, T.-C. Hsu, C.-H. Lee, S.-P. Wang, W.-S. Chen, C.-H. Huang, C.-C. Lee
*National Taiwan University, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 284-292
多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)に起因する医療関連感染症(HAI)は、集中治療室(ICU)において罹患率が上昇している。HAI 予防のための一般的な戦略は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を用いて患者を全身清拭することである。しかし、多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii;MDRAB)に対する CHG 浴の有効性は依然として議論の余地がある。本研究の目的は、ICU における A. baumanniiの保菌および感染に対する CHG 浴の有効性に関して、システマティックレビューとメタアナリシスを実施することであった。開始日から 2018 年 6 月まで、PubMed、EMBASE、Web of Science および CINAHL で系統的な文献検索を実施した。ランダム化比較試験(RCT)、前後比較試験または分割時系列研究が含まれた。実験群または対照群で A. baumanniiを保菌している患者または A. baumannii に感染している患者と、保菌も感染もしていない患者の人数を、各研究より抽出した。国立衛生研究所の関連尺度によって質評価を実施した。変量効果モデルを用いて統合リスク比を算出した。18,217 例の患者から成る RCT 1 件と前後比較試験または分割時系列研究 12 件が含まれ、そのうち 8,069 例は CHG 浴群、9,051 例は対照群であった。CHG 浴は A. baumannii の保菌の減少に関連していた(統合リスク比 0.66、95%信頼区間[CI]0.57 ~ 0.77、P < 0.001)。4%のクロルヘキシジンは 2%のクロルヘキシジンより高い効果を示した(メタ回帰 P = 0.044)。CHG 浴は感染の非有意な減少に関連していた(統合 RR 0.41、95%CI 0.13 ~ 1.25)。本研究により、CHG 浴は ICU における A. baumannii の保菌を有意に減少させることが示唆された。しかし、CHG 浴が A. baumannii 感染症を減少させることができるかどうかを裏付けるためには、さらなる試験が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本ではほとんど見かけることがない多剤耐性アシネトバクター属菌に対する CHG 浴の有効性に関するシステマティックレビューである。有効性が認められたと報告している一方で、評価された研究の内容にはかなりの heterogeneity(異質性)があったとしている。CHG 浴の有効性は様々な研究で報告されているが、その実際の方法も含めて引き続き検証が続けられるであろう。

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