シンクデザインによる排水およびエアロゾル化による微生物汚染の低減★
Mitigation of microbial contamination from waste water and aerosolization by sink design
K. Cole*, J.E. Talmadge
*University of Nebraska Medical Center, USA
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 193-199
背景
医療関連感染症は医療費、病的状態、死亡の増加の重要な原因であり、部分的にシンク、シンク排水管および接続された水系システムが関与するとされている。
目的
本研究用に新規にデザインした実験的シンク(手洗設備)により、空気中およびシンク台における微生物を含むエアロゾル化汚染物を低減できるかどうかを明らかにすること。
方法
実験的シンク(エアロゾル化および排水トラップの汚染を抑えるようデザイン)と対照としての病院のシンク(いずれも共通の排水システムに接続)の間で多重比較を実施した。実験的シンクには、紫外線、エアロゾル防止フード、オゾン水生成器、ならびに細菌増殖/エアロゾル化および排水トラップにおける細菌増殖を抑えるための洗浄システムが装備されていた。病院のシンクに通常廃棄される物質をシミュレートするため、栄養物質を添加した。表面採取用スワブ、平板培地および排水トラップについて、細菌および真菌による汚染レベルの評価を行った。
結果
実験的シンクでは、細菌および真菌による排水トラップ汚染が、最初のレベルより有意に低かった(トリプトソイ寒天培地およびサブロー寒天培地において99.9%)。排水トラップからのエアロゾルによる汚染物は、実験的シンクのほうが対照シンクより、トリプトソイ寒天培地(76%)およびサブロー寒天培地(86%)において有意に少なかった。
結論
微生物汚染を抑制することは、主要な汚染源となる室内シンクによる院内感染症の制御にとって不可欠である。今回の実験的シンクを用いた研究から、オゾン水によるシンク表面の定期的な洗浄、排水トラップ由来の水の汚染除去、ならびに紫外線を用いた表面の汚染除去により、微生物を含んだエアロゾル生成および表面の汚染が抑制され、あわせて患者の曝露を低減し、病院獲得感染症を減らす可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
近年、強毒株の C.difficile や耐性菌の出現により、環境整備は感染対策のなかでも重視されている。特に手洗い設備は、手洗シンクの構造により交差感染の供給源となる危険性があるが、あまりそのリスクが顧みられていない傾向にある。設計工学と感染制御の全面的協力により、①エアロゾルや汚染物の中の病原体の同定、②感染防止の観点からみたシンクデザインの評価と改善、③シンクの維持管理のための最適化された方法を確立することにより、より良いデザインのシンクが生まれるであろう。
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