母乳バンクにおける母乳搾乳キット洗浄の 2 法の比較★★

2019.10.15

Comparison of two methods for cleaning breast pump milk collection kits in human milk banks


B. Flores-Antón*, J. Martín-Cornejo, M.A. Morante-Santana, N.R. García-Lara, G. Sierra-Colomina, J. De la Cruz-Bértolo, C. Martín-Arriscado-Arroba, D. Escuder-Vieco, M. Soriano-Ramos, F. Chaves, C.R. Pallás-Alonso
*Hospital Universitario 12 de Octubre, Spain
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 217-222
背景
母乳搾乳キットの適切な汚染除去は、乳児にとって安全な母乳を確保するためにも、またドナーの母乳の廃棄を避けるためにも不可欠である。
目的
母乳搾乳キットの汚染除去の 2 つの方法を評価すること。英国国立医療技術評価機構(NICE)による低温殺菌処理前の培養基準に従って培養検査を行うとともに、廃棄されたドナー母乳の割合を算出した。
方法
前向き比較研究で、割り付け比率を 1:1とし、微生物学者を盲検化した。
参加者
マドリードの母乳バンクにおける新規ドナー 47 人。
介入
研究対象群(N = 21):使用後に水と洗浄剤で洗浄し、さらにマイクロ波殺菌バッグ内で蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キット。対照群(N = 26):洗浄、すすぎ、および乾燥のみ。ドナーあたり5 個のサンプルを採取:手の搾乳による初回サンプルと、それ以降は同じ搾乳ポンプと方法を用いた 4 個のサンプル(週 1 回)。
転帰
プライマリーアウトカム:汚染が原因で廃棄されたドナー母乳の割合。セカンダリーアウトカム:手による搾乳と搾乳ポンプにより得られたサンプル中の細菌叢の比較。
結果
合計で 217 の母乳サンプルが収集され、47 は手による搾乳、170 はポンプ搾乳(78 は研究対照群)であった。洗浄後にマイクロ波殺菌バッグで蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットでは、洗浄のみで蒸気による汚染除去を行わなかった母乳搾乳キットと比べて、廃棄されたドナー母乳の割合が低く(1.3%対 18.5%、P < 0.001)、腸内細菌科細菌(1.3%対 22.8%、P < 0.001)およびカンジダ(Candida)属菌(1.3%対 14.1%、P < 0.05)によって汚染されたサンプルの割合が低かった。蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットによるサンプルと、手による搾乳によるサンプルの間では、細菌汚染に差は認められなかった。
結論
洗浄後にマイクロ波殺菌バッグで蒸気による汚染除去を行った母乳搾乳キットを使用すると、廃棄に至るドナー母乳の量と、病原性のある細菌が含まれるサンプルの数を少なくできる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
母乳を搾乳後、冷凍保存して輸送し、ドナー母乳として他児に寄付する母乳バンクが現在増加している。バンクに到着後、冷凍した母乳を解凍して細菌検査を行い、菌数と菌種を調べるが、NICE は総細菌数が>10 5 CFU/mL、あるいは腸内細菌科細菌や黄色ブドウ球菌が>10 4 CFU/mLの場合は母乳を廃棄するよう勧めている。搾乳キットの接着部分(シリコンゴム製など)は頻繁に使うものであり、洗浄しても微量の母乳が残っていれば、菌の繁殖の温床になる。家庭で電子レンジで容易に行うことができ(本検討では 1日 1 回であった)、さらにこの結果は家庭での授乳にも応用することができるので、非常に有用な結果が得られたといえる。

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