液体培地中および固体物質上におけるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の生存ならびに消毒薬の効果の分析★★
Analysis of Acinetobacter baumannii survival in liquid media and on solid matrices as well as effect of disinfectants
Z. Bravo*, M. Orruño, T. Navascues, E. Ogayar, J. Ramos-Vivas, V.R. Kaberdin, I. Arana
*University of the Basque Country (UPV/EHU), Spain
Journal of Hospital Infection (2019) 103, e42-e52
背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は医療関連感染症の原因であり、病院内の無生物表面において苛酷条件下(例、消毒または乾燥)で生存する可能性が高い。
目的
液体培地中、ならびに病院環境を模した表面上における A. baumannii の生存戦略および持続生存する能力について理解を深めること。
方法
4 種類の A. baumannii 株(ATCC 19606T および 3 つの臨床分離株)について、温度、栄養欠乏状態、無生物表面上での持続生存、ならびに消毒薬への曝露が生存に及ぼす影響を、蛍光顕微鏡を用いた総細胞数および生存細胞数、ならびに標準培養法による培養可能細胞数のモニタリングにより検討した。
結果
細菌生存への影響は、温度(20°C で維持された細胞は、少なくとも 30 日間培養可能な状態に留まった)および物理的環境(乾燥下で細胞は 37°C でストレスに抵抗性を示した)により差が認められた。さらに、持続生存は以下の 2 つの適応パターンに関連していた:一方は生存しているが培養不可能な状態への移行、他方は明らかに増加と減少の繰り返しモデルに従うこと。消毒薬(市販の漂白剤および四級アンモニウム化合物)の効果に関する試験中に、これらの抗菌化合物による処理では A. baumannii の細胞集団は殺滅されず、培養可能な細胞集団の減少が誘導されたが、一部の細胞は培養可能な状態に留まった。
結論
病院に通常存在する表面を模した様々な表面上で長期にわたり持続生存する能力は、消毒処理後の A. baumannii の生存能力とともに、集中治療室におけるアウトブレイク再発の原因となり得る。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アシネトバクター・バウマニー(AB)は、言わずと知れた日和見感染菌であり、最近のレビューでは 22 カ国で 150 のアウトブレイクが報告されている。グラム陰性桿菌であるにもかかわわらず、乾燥環境に強いことがこれまでにも報告されており、本論文ではその AB の生態についての研究である。本結果は環境整備の重要性を再認識させてくれる。実際、日本で多剤耐性 AB のアウトブレイクが報告(下記URL参照)され、環境や医療機器・器材への汚染除去に苦慮したことが報告されている。
(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072943.pdf)
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