交差感染/使用者の観点による手洗い用蛇口のデザインに関する観察研究:根本的に再考すべき時か?★★

2019.09.29

Observation study of water outlet design from a crossinfection/user perspective: time for a radical re-think?


M.J. Weinbren*, D. Scott, W. Bower, D. Milanova
*Kings Mill Hospital NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 103, e68-e72
背景
手洗いは交差感染に対する極めて重要な防御であり、手洗いステーションで行われる。肘操作用蛇口は、正しく使用されなければ(手指で操作)接触頻度が高い物体となり、交差感染の経路となる可能性がある。
目的
病院のスタッフによって肘操作用蛇口がどのように使用されているか、様々な病棟区域において正しいタイプの手洗いステーションが Health Building Note(HBN)00-10 Part C: Sanitary Assemblies(臨床、調理および検査区域における手を使わずに操作できる蛇口)に従って設置されているかどうか、ならびにデザイン/設置に関して正しい使用の遵守に影響する可能性のある因子について検討すること。
方法
蛇口使用の観察を、4 つの手洗いステーションの上にビデオカメラを設置して行った。蛇口の適切性のレビューを、著者らの 2 名が、病棟区域を訪れ、遵守が HBN の推奨に反していないか評価することで実施した。肘操作用レバーの設置角度の測定を、分度器を用いて、また肘操作用レバーの操作角度に応じた水温の測定を較正済みの熱電対を用いて行った。
結果
スタッフの 92%が蛇口を開くために、68%が蛇口を閉めるために手指を使っており、手指が再汚染された可能性があった。使用者の 70%超が、レバーを 45 度以上動かしていた。肘操作用レバーのほぼ半数が正しく設置されておらず、常に水が流れている状態あるいは後部パネルから 3.5 cm 以内に設置されていて、肘による操作が極度に困難になっていた。HBN に従った蛇口タイプの選択は、集中治療室ではほとんど間違えていたが、病院の新築区域でも間違えた選択が認められた。
結論
手洗いは交差感染に対する極めて重要な防御であるが、蛇口の不適切な選択と間違えた使用により、その有効性が損なわれている。デザインと間違えた設置により、肘操作用レバーの操作における意図された意味がさらに損なわれている。同様に懸念されるのは、現状ではこのリスクがほとんど認識されていないことである。手洗いの安全性を向上させる機会はあるが、それには英国保健省および製造者から使用者に至るまでの幅広い層を関与させることが必要となる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
英国の Health Building Note(HBN)(医療施設建築覚書)には、病院設備の設計に関して細かく取り決められており、これに従って「手洗いシンク」も設置され、蛇口はセンサーまたは肘操作で水が出るようにすることとされている。本論文では実際の利用状況を観察すると、肘操作のレバーを手で操作している医療従事者が圧倒的に多いこと、またレバーの位置も肘操作できないような設定になっており、交差感染のリスクを増やしていると警告している。日本でも HBN のような医療施設の設備に関する具体的な指針がが必要である。
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/148497/HBN_00-10_Part_C_Final.pdf

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