新生児集中治療室での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のアウトブレイク調査における「一体型」 7 日間全ゲノムシークエンス法ソリューションの評価

2019.07.02

Evaluation of an ‘all-in-one’ seven-day whole-genome sequencing solution in the investigation of a Staphylococcus aureus outbreak in a neonatal intensive care unit


C. Rouard*, N. Bourgeois-Nicolaos, L. Rahajamanana, O. Romain, L. Pouga, V. Derouin, D. De Luca, F. Doucet-Populaire
*Hôpitaux Universitaires Paris Sud, Hôpital Antoine Béclère, France
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 297-303
背景
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、集中治療室におけるアウトブレイクの原因である。MSSA 感染症は MRSA 感染症と同様の罹患率および死亡率を有するが、研究頻度は低い。全ゲノムシークエンス法(WGS)はアウトブレイクのモニタリングへの使用が増加しているが、データの入手および解析のため、特有のインストールおよび訓練を受けた人材が依然として必要である。
目的
新生児集中治療室(NICU) 1 カ所での黄色ブドウ球菌血流感染の発生率上昇に関する調査において、EpiSeq solution(bioMérieux社、Marcy l’Etoile、フランス)の作業の流れおよび有益性を評価すること。
方法
2016 年 1 月から 7 月の間に入手した黄色ブドウ球菌菌血症分離株 4 株および保菌分離株 27 株を、「一体型ソリューション」EpiSeq(WGS、品質データ評価、multi-locus sequence typing[MLST]法、spa タイピング、ビルロームおよびレジストームの特性、系統樹作成)に提出した。BioNumerics ソフトウエア(Applied Maths 社、Sint-Martens-Latem、ベルギー)を用いて、より詳細な解析(全ゲノム MLST、全ゲノム一塩基多型[SNP])を実施した。
結果
試験した分離株 31 株のうち、9 つの異なる配列型および 13 の異なる spa 型が認められた。これらの分離株のうち、11株(患者 7 例)は ST146 spa 型 t002 であり、5株(患者 4 例)は ST30 であり、4株(患者 4 例)は ST398 であった。ST146 の分離株 11 株は、最大で 7 対の SNP の違いを有していた。
結論
EpiSeq solution の使用により、新生児における MSSA 集団の多クローン性の特性について迅速な実証が可能となり、大規模のアウトブレイクの疑いを除外できた。しかし、全ゲノム SNP の解析によって、NICU において 6 か月を超えて 1 つの配列型が伝播および残留したことが示され、それにより感染対策チームが対応策を変えることができた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MRSA のアウトブレイク調査には薬剤感受性の相同性や PFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)などが用いられてきたが、近年全ゲノム解析法が身近になってきたことから、その有用性が度々報告されている。全ゲノム解析は菌種に関わらず可能なことから、本報告のように MSSA のアウトブレイクについても行うことができる。日本では POT 法がよく用いられているが、今後全ゲノム解析やその変法の普及が進むかもしれない。

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