医療関連の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血流感染症に対する予防評価および対応ツールのデルファイ法を用いた開発と試験運用(SAB-PART 研究)
Development and piloting of a prevention assessment and response tool for healthcare-associated Staphylococcus aureus bloodstream infection (the SAB-PART Study) using a Delphi method D. Karanfilovska*, A.C. Cheng, D. Spelman, L.J. Worth *Alfred Health, Australia Journal of Hospital Infection (2021) 115, 17-26
背景
医療関連の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血流感染症(HA-SAB)は、入院患者に対して予防可能な害を及ぼす。現在、組織レベルでの措置を要する予防可能なリスクを特定し標的とするための HA-SAB イベントのレビューに役立つ標準化された方法はない。
目的
予防可能性の度合いに応じて SAB イベントを分類するツールを開発し、必要な対応措置を策定すること。
方法
文献レビュー後にツールを開発した。デルファイ法を用いて、医療関連感染症のサーベイランスの専門家(N = 11)に、本ツールに関する合意のフィードバックと開発を求めた。1 つの大規模な医療組織で発生した HA-SAB イベント(N =43)に、完成したツールを後向きに適用した。
結果
調査完了率は高かった(91 ~ 100%)。臨床医による感染予防実践の遵守が不十分であることと、フィードバック過程への取り組みが不足していることが重要な修正可能要素として確立された。2 番目の重要なテーマは、構造化された綿密な対応措置の必要性であった。このフィードバックは本ツールに取り入れられ、すべての要素に関する合意が得られるまで改良された。本ツールの試験的な適用によって、HA-SAB イベントの 56%は予防可能性が高いかおそらく予防可能であること、残りの症例には HA-SAB 予防の修正可能要素はないことが確認された。
結論
組織が HA-SAB の個別症例の調査・対応を行い、SAB 減少戦略の今後の優先分野を特定するのを支援するために、合意形成法を用いて予防評価および対応ツールを開発することに成功した。感染予防プログラムと患者転帰に対する影響を評価するためには、本ツールがルーチンのサーベイランス活動でより広く使用されることが必要である。
監訳者コメント:
Delphi 法は、専門家の意見を系統的に集約する方法である。複数のガイドラインや日本では JSIPHE 専門家委員会でも用いられている手法であり、専門家の合意形成の方法として期待されている手法でもある。
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