日本における薬剤耐性菌によるアウトブレイクの自動検出★★

2019.06.18

Automated detection of outbreaks of antimicrobial-resistant bacteria in Japan


A. Tsutsui*, K. Yahara, A. Clark, K. Fujimoto, S. Kawakami, H. Chikumi, M. Iguchi, T. Yagi, M.A. Baker, T. O’Brien, J. Stelling
*National Institute of Infectious Diseases, Japan
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 226-233
背景
医療機関での薬剤耐性菌によるアウトブレイクは、可能な限り早期に検出・制御されねばならない。
目的
病院における薬剤耐性菌によるアウトブレイクの自動検出のための枠組み(フレームワーク)を構築すること。
方法
日本の厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)は、世界的に最大規模の薬剤耐性(AMR)サーベイランスプログラムの 1 つである。本研究のために、2011 年 から 2016 年について JANIS データベースから細菌に関するデータをすべて抽出した。微生物学的データの管理を目的としたフリーソフトウェアである WHONET、ならびに WHONET に組み込まれたクラスター検出のためのフリーツールである SaTScan を用いて、適格と判断した病院の 2015 年 から 2016 年までのデータを分析した。次いで、2011 年 から 2016 年のデータを用いて、日本全国の代表的な病院 10 施設を対象に手動で評価およびバリデーションを行った。
結果
病院 1,031 施設のデータを検討した。中規模病院(200 ~ 499 床)が 60%を占め、次いで大規模病院(500 床以上、24%)および小規模病院(200 床未満、16%)の順であった。大規模病院では、より多くのクラスターが検出された。ほとんどのクラスターは、5 例以下の患者であった。病院 10 施設の詳細な分析から、検出されたクラスターの約 80%は、感染制御スタッフによって認識されていなかったが、その理由は、関与していた菌種がルーチンのサーベイランス対象として優先される病原体リストに含まれていなかったためであった。病院 2 施設では、より耐性の株によるアウトブレイクが発生する前に、より感性の株によるクラスターが検出された。
結論
WHONET-SaTScan を使用すると、優先度の高い薬剤耐性病原体のリストには含まれないものの、耐性プロファイルを示す菌株が分離された患者について、疫学的に関係のあるクラスターを自動的に検出できる。より感受性の高い株によるクラスターが検出できれば、より耐性の株によるアウトブレイクが発生する前に、感染制御上、早期の介入の実施が可能になるであろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
JANIS データを活用したことによる、小さなクラスターの早期発見の有用性を報告した論文である。JANIS データからクラスターが読み取れることはかねてから判明していたが、それを感性の株も含め(市中感染と認識されやすい株も含め)、自動的に検出できる点で有用性が高い。現場の感染対策スタッフを補助する役割が期待できるであろう。一読をお勧めする。

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