実験モデルシステムにおいて、流しからのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の拡散は排水管の位置と排水速度と関連する

2019.05.10

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae dispersal from sinks is linked to drain position and drainage rates in a laboratory model system


P. Aranega-Bou*, R.P. George, N.Q. Verlander, S. Paton, A. Bennett, G. Moore, TRACE Investigators’ Group
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 63-69
背景
病院の流し、排水トラップ、排水管には、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が生息しうる。
目的
蛇口から供給される水が直接排水管に流れる流しや、後方に排水管のある臨床用の手洗い用流しからの、CRE 拡散について調査すること。さらに、高速および低速の排水の影響について評価した。
方法
排水トラップは、CRE が定着することで知られている。病院の排水トラップを取り外し、実験用のモデルシステムに設置した。新しい排水トラップも設置し、CRE を人工的に播種した。細菌が流しから拡散される可能性を、サイクロン式エアサンプラー法および/または落下菌測定法によって評価した。
結果
排水トラップを人工的に汚染し、CRE 定着を排水トラップの水にとどめた場合、急速に排水した流し(P = 0.004)および/または後方に排水管のある流し(P = 0.002)からの細菌の拡散は有意に少なかった。排水トラップを自然に汚染させて、CRE がトラップ、配管、排水管に定着した場合、流しの排水と排水管の位置に有意な相互関係がみられた(P < 0.001)。低速の排水では、後方に排水管のある流しからの拡散は、蛇口の下に排水管のある流しよりも、ほぼ30倍少なかった(P < 0.001)。高速の排水の場合も、後方に排水管のある流しのほうが、CRE の拡散が比較的少なかった。ただし、この場合、統計学的に有意差はなかった(P = 0.7)。汚染された水しぶきは、流しから
1 m は飛散する。
結論
排水速度が遅く、蛇口の真下に排水管を備えたデザインの流しは、排水トラップおよび排水管への CRE 定着のリスクが増大し、病棟環境を汚染する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CRE の拡散と流し(シンク)の汚染について、度々報告されている。今後、本研究のような基礎的検討が増え、微生物汚染に強いシンクが開発されるものと思われる。

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