欧州の急性期病院を対象とした医療関連感染症および抗菌薬使用の点有病率調査のための国内バリデーションチームにおける評価者間のばらつきについて評価することを目的とした症例ビネットの作成★
Development of case vignettes for assessment of the inter-rater variability of national validation teams for the point prevalence survey of healthcare-associated infections and antimicrobial use in European acute care hospitals
E. van Hauwermeiren*, E. Iosifidis, T. Kärki, C. Suetens, P. Kinross, D. Plachouras
*Spedali Civili Hospital, Italy
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 455-460
背景
2016 年から 2017 年にかけて、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は欧州の急性期病院を対象に、医療関連感染症(HCAI)および抗菌薬使用に関する 2 回目の点有病率調査を計画した。今回の調査には、症例の同定および分類の正確度を最大化するための精度保証研究が含まれた。
目的
ECDC は、国内精度保証チームの成績を評価するための症例ビネットを作成した。
方法
HCAI 治療および抗菌薬管理の経験がある 2 名の内科医が症例ビネットを作成した。症例ビネットは、実際の臨床症例に基づくものであった。症例ビネットにおける HCAI の分布には、前回の点有病率調査における HCAI の分布を反映させた。すべての症例ビネットについて、3 名の専門評価者が予備評価を行った。専門評価者間の一致度を、κ統計量を用いて評価した。
結果
症例ビネット 60 件を作成した。そのうち 29 件は HCAI 症例、31 件は HCAI ではない症例であった。κ統計量による評価者間信頼度は、HCAI の存在について 0.78、抗菌薬使用について 0.89 であった。
結論
専門評価者間の一致度は、抗菌薬使用については非常に良好、HCAI の存在については良好であった。症例ビネットは、サーベイランスの標準化を助けるツールとして利用可能であり、データの妥当性および比較可能性を高める。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ECDC による点有病率調査は 2011 年に初めて開始された、それ以前には標準化された定義や方法論もなく、HAI や抗菌薬使用の調査が統一して実施できていなかった。したがって、欧州関係国間での比較ができなかった。一方で標準化した場合でも、多国で実施するため国毎のリファレンスチームで解釈が異なる可能性があるため、代表症例(ケースビネット)を作成し、これを利用して定義の解釈のばらつきをなくす工夫がなされた。
サーベイランスをする際に、定義を決めることは重要であるが、その定義が正しく理解され、データが正確に収集されているかは、ケースビネットにより統一された解釈をもつ判定者により実施されることが重要である。
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