反復点有病率調査による地域レベルでの医療関連感染症および抗菌薬使用のモニタリング:得られる教訓は何か?★

2019.04.15

Monitoring healthcare-associated infections and antimicrobial use at regional level through repeated point prevalence surveys: what can be learnt?


L. Arnoldo*, C. Smaniotto, D. Celotto, L. Brunelli, R. Cocconi, D. Tignonsini, A. Faruzzo, S. Brusaferro, on behalf of the FVG Regional ‘Safety Care’ Group Department of Medicine
*University of Udine, Italy
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 447-454
背景
医療関連感染症(HAI)のサーベイランスは、あらゆる感染予防・制御プログラムにおいて不可欠の部分を成す。欧州疾病予防管理センター(ECDC)のプロトコールに従った反復点有病率調査が、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア全域(イタリア)の急性期病院において HAI を抑制し、管理する目的で実施されるようになっている。
目的
1 つの地域医療システム内で反復点有病率調査を用いて、感染予防・制御プログラムを促進および評価すること。
方法
ECDC 点有病率調査プロトコールの標準版を用いて、全 4 回の調査を行った(2011 年、2013 年、2015 年、2017 年)。地域医療システム内のすべての公立および私立の認定病院を、「セーフケアネットワーク」プログラムに組み入れた。
結果
4 回の点有病率調査の対象となった患者数はそれぞれ 3,172 例、3,253 例、2,969 例、および 3,036 例であった。HAI の有病率および抗菌薬使用の実施率は、2011 年から有意に低下し、 HAI (P < 0.05)はそれぞれ 7.1%、6.3%、5.5%、5.8%、ならびに抗菌薬使用(P < 0.01)はそれぞれ 40.4%、39.2%、36.0%、37.2%であった。手術時予防投与の期間の適切さは有意に上昇した(2011 年の調査と比較して 24 時間未満の投与が全調査において増加した:それぞれオッズ比[OR]1.29、95%信頼区間[CI]0.92 ~ 1.81;OR 1.95、95%CI 1.31 ~ 2.91;OR 1.78、1.20 ~ 2.64)。検出された HAI で頻度の高かったものは、血流感染症、尿路感染症、肺炎、および手術部位感染症であった(各点有病率調査において HAI の 70%超であったもの)。
結論
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア地域を対象とした HAI および抗菌薬使用サーベイランスのアプローチにより、有病率および使用率が 7 年間にわたり低下した。さらに、サーベイランス期間を通じて病院の注意を HAI および抗菌薬使用に向けさせることができ、また全地域医療システム病院において HAI および抗菌薬使用の負担の標準化および比較評価を確実に実施することを可能にしたとともに、HAI および抗菌薬使用に関する地域プログラムに影響を及ぼすことができた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
HAI でのサーベイランスを実施し、結果を共有することは、以前から感染予防対策の重要な課題として実施されてきているが、同時に世界的な耐性菌の増加は抗菌薬の適正使用を推進することは吃緊の課題でもある。常時サーベイランスを実施することは時間と人など労力がかかるが、ECDC はポイントサーベイランスで、1 病棟 1 日で集計し、1 病院ですべての病棟を 12 日間程度でデータ収集を実施する。このデータの公表により、各国ごとの HAI と AU の情報がわかるとともに、経時的な変化がわかるため、感染対策スタッフのみならず病院管理者にもその状況が明らかとなり、その地域あるいは病院での感染対策を考えてゆく上で非常に有用である。しかしながら、データ収集には統一した判断基準が求められるため教育訓練が必要である(次の論文参照)。

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