手指衛生促進の要因として成績フィードバックおよび目標設定を用いた準無作為化前後比較研究

2019.04.15

A quasi-randomized controlled before-after study using performance feedback and goal setting as elements of hand hygiene promotion


S. Diefenbacher*, P.M. Fliss, J. Tatzel, J. Wenk, J. Keller
*Ulm University, Ulm, Germany
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 399-407
背景
手指衛生は、感染予防に重要な役割を果たすが、不十分であることが多い。
目的
手指衛生の改善において、目標設定と成績フィードバックの可能性を検証すること。
方法
ドイツの病院において前向き比較介入研究を実施した。研究は 4 期からなり、新規カウントディスペンサーおよび観察者への馴化(T0)、ベースライン(T1)、介入(T2)、介入後(T3)とした。目標設定、成績フィードバック、目標設定と成績フィードバックの複合、いずれもなし(対照)の 4 つの条件の 1 つに、集中治療室以外の 4 病棟を割付けた。4 期を通して、ディスペンサーの使用を電子的に連日 24 時間記録した。さらに、4 期の各段階において、無作為抽出による直接観察を、訓練を受けた外部の観察者が実施した。主要評価項目は、電子的に計測した病室あたりの手指衛生イベントの 1 日平均とした。
結果
成績フィードバック条件において、T1 から T2 への手指衛生イベントの増加に有意傾向がみられた(平均[M]T1 = 7.3、MT2 = 10.3、MT3 = 8.2)。目標設定条件では、T1 から T2 への手指衛生イベントは記述的な増加にとどまった(MT1 = 6.8、MT2 = 8.7、MT3 = 7.8)。複合条件では、T1 から T2 への手指衛生イベントの有意な増加がみられ、T3 においても依然として有意に増加した(MT1 = 7.9、MT2 = 17.0、MT3 = 12.9)。すべての病棟および 4 期の試験段階を通して、カウントディスペンサーの使用頻度は、手指衛生遵守と高い相関を示した(相関係数 = 0.766、P < 0.001)。
結論
本研究より、目標設定およびフィードバックの複合条件が、手指衛生の改善に向けた有用なアプローチであることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手指衛生遵守率向上のための介入を評価した論文である。準備期間の後、約 4 週間の介入、その後約 4 週間の介入後の評価を行い、目標設定とフィードバックを合わせて行うことが有効であるという結果を得た。介入後の期間に遵守率が低下していくことが結果からうかがえた。必要なのは、長期間にわたり遵守率を保つことができるプログラムであろうと思われる。

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