神経外科における手術部位感染サーベイランスの効果★★

2011.04.01

Impact of surgical site infection surveillance in a neurosurgical unit


S. Buffet-Bataillon*, C. Haegelen, L. Riffaud, M. Bonnaure-Mallet, G. Brassier, M. Cormier
*CHU Pontchaillou, France
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 352-355
本稿では、神経外科手術後の手術部位感染(SSI)の 2 年間にわたるサーベイランス、および深部脳刺激療法を施行した症例における感染症アウトブレイクについて述べる。2008 年の 4 月から 12 月に、深部脳刺激療法施行後に 6 例の患者が SSI を発生した。手術にかかわる衛生実践、医療環境の感染制御、および術前の予防的抗菌薬投与の特性の監査を行った。その結果から、術前皮膚処置および抗菌薬予防投与が適切に行われていないことが示された。2008 年の全 SSI 発生率は 1.8%であった(1,471 例中 27 件)。術前入院期間は、感染発症患者(2.7 ± 2.9 か月)のほうが非発症患者(2.2 ± 4.6か月)より有意に長かった(P = 0.01)。これらの結果に基づき、神経外科チームとともに術前皮膚処置および抗菌薬予防投与を再検討した。2009 年の全 SSI 発生率は 1.1%(1,410 例中 SSI 16 件)であり、2008 年と比較して減少した(P = 0.12)。2008 年の全 SSI 発生率(1.8%)はこれまでに公表されているデータの範囲内であったが、今回の SSI サーベイランスによって、深部脳刺激療法のための手術後に SSI が認められた患者を特定することが可能であった。その後、SSI リスクを低下させる一連の措置が講じられた。今回の結果は、積極的サーベイランスプログラムによって臨床実践がいかに改善するかを示すものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SSI サーベイランスを行って SSI を同定・監視し、それによって SSI のアウトブレイクを発見することが可能になり、その原因の調査を行い、問題点を明確にして改善していくという、サーベイランスのお手本のような報告である。フランスからの報告であるが、Infection Control Team(ICT)という言葉も使われており、感染制御担当者と外科医が全面的に協働して SSI 防止を目指している様子がうかがえる。模範的活動であり、また日本のサーベイランスの手法に近く、大いに参考になる。この手の論文で逃しがちな SSI の定義も明確に記されており、論文としての質も高い。是非ご一読をお勧めする。

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