急性期病院環境におけるインフルエンザ B ウイルスの院内アウトブレイクの分子的特性
Molecular characterization of a nosocomial outbreak of influenza B virus in an acute care hospital setting
M. Sansone*, Å. Wiman, M.L. Karlberg, M. Brytting, L. Bohlin, L-M. Andersson, J. Westin, R. Nordèn
*University of Gothenburg, Sweden
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 30-37
目的
2015 年から2016 年のインフルエンザシーズン中のインフルエンザ B ウイルス感染症の院内アウトブレイクについて、臨床的・疫学的データと分子的方法を統合して示すこと。
方法
4 週間にわたる院内アウトブレイク由来のインフルエンザ B と診断された患者 20 例を対象とした。マルチプレックスリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインフルエンザ B 陽性を示した鼻咽頭サンプルを、系統分類と全ゲノムシークエンス法のために送った。患者特性、入院病棟、曝露、アウトカムに関するデータについて診療記録を後向きにレビューし、時系列にまとめた。院内アウトブレイクと関連している可能性を突き止めるために、期間を延長して、その区域における鼻咽頭サンプルインフルエンザ陽性の全患者もレビューした。
結果
インフルエンザ B の 20 例すべてが、B / Yamagata 系統に分類され、20 例のうち 17 例は、同室または同じ病棟であったことから、相互接触する可能性があった。全ゲノムシークエンスにより、ウイルス分離株 17 株のうち 15 株について解読または一部解読ができ、近縁を裏付ける疫学的関連が実証された。主な感染病棟において、アウトブレイク期間に入院患者 75 例のうち 19 例がインフルエンザ B に感染し、罹患率は 25%となった。インフルエンザ関連死である可能性の高い患者 1 例が確認された。
結論
インフルエンザ B は急性期病院内で伝播する可能性があり、高度な分子的方法が、アウトブレイクの発生源と範囲の評価を容易にするであろう。迅速な診断、アウトブレイクの状況の早期発見、患者管理のための簡易な規定、正規の感染制御対策の使用など多角的なアプローチによって、インフルエンザウイルスの院内感染を防止できると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
スウェーデンにある 200 床の急性期病院で発生したインフルエンザ B ウイルスによる集団発生の疫学調査および分子疫学調査をまとめた論文である。主に同一病棟、病室での発生であったが、インフルエンザを発症したものの、休暇を取っていなかった医療従事者が感染源であることが疫学調査から示唆された。院内伝播をどう防ぐかと同時に、発症した医療者への対応が重要である。
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