英国の手術部位感染症の全国的サーベイランスを分析する:必要性と優先課題★
Mapping national surveillance of surgical site infections in England: needs and priorities
R. Troughton*, G. Birgand, A.P. Johnson, N. Naylor, M. Gharbi, P. Aylin, S. Hopkins, U. Jaffer, A. Holmes
*Imperial College London, London, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 378-385
背景:
抗菌薬耐性が増加したことで、患者の安全性の改善を図るために重要な役割を担う効果的なサーベイランス対策によって、手術部位感染症(SSI)を予防することの重要性が強調されている。
目的:
現行の全国的サーベイランス活動に対して、SSI サーベイランスの全国的な必要性と優先事項を分析すること。
方法:
本研究では、英国 National Health Service(NHS)の 23 の手術に対応する病院の SSI サーベイランスについて分析した。以下のデータを収集した:(i)年間手術件数(ii)全国的な報告による SSI 発生率(iii)全国的な報告要件(義務、任意、要件なし)(iv)英国 NHS の病院 84 施設の調査による優先順位(v)文献による入院期間延長および費用。記述的分析および単変量分析を用いて、推定される SSI の負担、全国的なサーベイランス活動、病院報告による優先事項の関連性を検討した。
結果:
分析した 23 の手術カテゴリーのうち、病院による最優先順位の手術は、現行のサーベイランス(r = 0.76、P < 0.01)、義務的報告(33%対 8%、4%、P = 0.04)のみと関連した。サーベイランスを実施している病院、義務的報告、優先事項の選択の割合は、SSI の負担と一致しなかった。大腸手術(任意的報告)、帝王切開(要件なし)は、年間の SSI 総数に寄与する 2 大因子で、それぞれ 39,000 件(38%)、17,000 件(16%)であった。一方で、4 つの整形外科手術カテゴリー(すべて義務的報告)は、SSI 減少に寄与し、5,000件(5%)であった。また、大腸手術は関連費用が最大であった(年間 1 億 1,900 万ポンド)。
結論:
現行のサーベイランスと今後の優先事項は、SSI 発生率、手術件数、病院への費用と関連しなかった。SSI と関連費用に寄与する 2 大因子は、全国的サーベイランスの対象となっていない(帝王切開)か、任意とされている(大腸手術)。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
かなり意外な展開になっていることがこの論文から導き出されている。そもそも、限定的 SSI サーベイランスで実施部署を決定した際の基準はどこにあったのだろうか?
医療費ばかりでは SSI 実施のインセンティブとはならない。感染率の低いはずの術式で高い感染率になっている病院があれば、それ自体は大問題だからだ。
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