中国のNICUにおけるカンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)sensu stricto による真菌血症の院内アウトブレイク
Nosocomial outbreak of Candida parapsilosis sensu stricto fungaemia in a neonatal intensive care unit in China
L. Qi*, W. Fan, X. Xia, L. Yao, L. Liu, H. Zhao, X. Kong, J. Liu
*Army General Hospital, PLA, China
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e246-e252
背景
カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)は真菌血症の一般的な原因菌であるが、C. parapsilosis 感染症のアウトブレイクは中国ではほとんど報告されていない。
目的
2017 年の 7 月から 10月にかけて、中国の総合病院内のNICUにおいて発生した C. parapsilosis sensu stricto による真菌血症の院内アウトブレイクを詳細に記述すること。
方法
真菌血症症例の疫学および特性を調べ、サーベイランスサンプルを収集した。Vitek 2 Compact System、Internal Transcribed Spacer(ITS)シークエンシング、および Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)タイピングを実施して、分離株の同定を試みた。抗真菌薬に対する感受性検査をすべての血流分離株に対して実施した。
結果
本期間中に、新生児 16 例が C. parapsilosis sensu stricto 真菌血症と診断された。認められた所見は、白血球減少、血小板減少、およびクラックルなどであった。15 例は治癒したが、1 例は重度の併存疾患を有しており、死亡した。分離株は、フルコナゾール、アムホテリシン B、イトラコナゾール、ボリコナゾール、および 5-フルオロシトシンに感受性であった。計 313 個のサーベイランスサンプルを収集したが、環境サンプル 16 個および超音波技師の手指から採取したサンプル 1 個において C. parapsilosis sensu stricto が検出された。環境サンプルが陽性となったのは、ワイピングクロス、蛇口、シンク、手術台、洗面所の溜まり水、人工呼吸器 1 台、および超音波プローブ 1 本などであった。血液分離株とサーベイランス分離株のRAPD パターンはすべて同一であった。一連の感染制御策を実施した後、このアウトブレイクは制御され、終息した。
結論
汚染された環境がこのアウトブレイクと関連していた。NICU においては、免疫不全患児に対する綿密な注意、徹底的な環境消毒、および手指衛生を強化すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
湿潤した環境である NICU ではカンジダ感染症のリスクは高く、大きな脅威となる。特に粘膜バリアの破綻の容易さ、多くのデバイス、多数のスタッフによる多くの手技・ケアがカンジダ定着・伝播に大きく関与する。またC. parapsilosisはキャンディン系抗真菌に低感受性であるために、キャンディン系の使用の多い状況ではさらに発生リスクが高まる。今回の集団発生では、既に環境も深刻に汚染されていたが、このような例での制御は非常に難しいことが予想される。他報告と合わせて読むことをお勧めする。
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