緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は実験室および模擬臨床環境においてオクテニジンに適応し、クロルヘキシジンおよび他の殺生物薬に対する耐性増加を引き起こす★

2018.11.24

Pseudomonas aeruginosa adapts to octenidine in the laboratory and a simulated clinical setting, leading to increased tolerance to chlorhexidine and other biocides


M.J. Shepherd*, G. Moore, M.E. Wand, J.M. Sutton, L.J. Bock
*Public Health England, Salisbury, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e23-e29
背景
オクテニジンは新生児集中治療室および熱傷集中治療室における感染予防に頻繁に用いられるが、そこでは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が院内アウトブレイクを引き起こしてきた。
目的
緑膿菌に対するオクテニジン使用の有効性および影響を検討すること。
方法
数日にわたり緑膿菌の臨床分離株 7 株を、濃度を上昇させたオクテニジンに曝露させた。緑膿菌の親株およびオクテニジン適応緑膿菌に関し、様々な抗菌薬の適応度、1 分、5 分、24 時間後の最小殺菌濃度、および最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。病院の排水トラップ 1 つから分離した緑膿菌の集団に対する、オクテニジンおよびクロルヘキシジンの MIC も検討した。排水トラップは希釈したオクテニジン製剤に1 日 4 回 3 か月間曝露させたものであった。
結果
緑膿菌の浮遊培養の一部は、推奨されている曝露時間で、使用中のオクテニジン製剤の使用濃度の 50%を超える濃度において生存した。緑膿菌の 7 株は、濃度を上昇させたオクテニジンを継続的に曝露した後も安定に適応した。適応によりオクテニジン製剤およびクロルヘキシジンへの耐性が 32 倍まで増加した。1 株では、抗緑膿菌薬の MIC の上昇も引き起こした。模擬臨床環境で複数菌種に対して継続的にオクテニジンを曝露した後に、緑膿菌のオクテニジンおよびクロルヘキシジンに対する耐性も 8 倍までの増加が認められたが、この耐性はオクテニジンの除去により失われた。
結論
オクテニジン製剤の誤った使用は、不適切な汚染除去、ならびに緑膿菌のオクテニジンに対する耐性の増加さえ引き起こす可能性があり、他の殺生物薬(消毒薬)への交差耐性につながることもある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
緑膿菌による院内感染症は集中治療領域、とくに新生児と熱傷の分野では致命的な感染症となる。オクテニジンは、皮膚や粘膜からの吸収がなく、毒性も低く、接触性皮膚炎もなく、さらに細胞障害性もクロルヘキシジンに比し低いことがわかっていおり、その結果皮膚の除菌、創部洗浄、消毒剤として 0.05 ~ 0.3%の濃度で幅広く使用されている。本論文の実験によりオクテニジン抵抗性の緑膿菌がオクテニジン曝露により発生することが判明した。さらにアミノグリコシドへの交差耐性を示す株が認められ、今後オクテニジンの使用方法について考慮する必要がある。

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