短期型末梢静脈カテーテル関連血流感染症を減少させるための介入:発生率および死亡率への影響★
Interventions to decrease short-term peripheral venous catheter-related bloodstream infections: impact on incidence and mortality
P. Saliba*, A. Hornero, G. Cuervo, I. Grau, E. Jimenez, D. Berbel, P. Martos, J.M. Verge, C. Tebe, J.M. Martínez-Sánchez, E. Shaw, L. Gavaldà, J. Carratalà, M. Pujol
*Bellvitge University Hospital, Spain
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e178-e186
背景
短期型末梢静脈カテーテルは医療関連血流感染症の重要な感染源の 1 つであり、また予防可能な死亡原因の 1 つである。
目的
短期型末梢静脈カテーテル関連血流感染症に関連する発生率および死亡率を低下させるために行われた介入の有効性を評価すること。
方法
介入には、末梢静脈カテーテル関連血流感染症の継続的なサーベイランス、エビデンスに基づく勧告と対象病院固有のデータを参考に定めたカテーテル挿入と維持管理に関する予防策の実行、現場スタッフの啓蒙活動、病棟回診による院内ガイドラインの遵守の評価が含まれた。ポアソン回帰モデルを用いて年率の動向を推定した。
結果
2003 年 1 月から 2016 年 12 月までに、大学病院 1 施設の入院患者において、末梢静脈カテーテル関連血流感染症 227 件のエピソードが特定された。患者の平均年齢は 67 歳(標準偏差 14 歳)、69%は男性であり、Charlson スコアの中央値は 3(四分位範囲 2 ~ 5)であった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によるものは 115 件(50.7%)であった。30 日死亡率は 13.2%であった。介入の実行後、末梢静脈カテーテル関連血流感染症のエピソードは 30 件(10,000 患者・日あたり 1.17 件、2003 年)から 8 件(10,000 患者・日あたり 0.36 件、2016 年)へと有意に減少した。黄色ブドウ球菌が引き起こしたエピソードは、18 件(10,000 患者・日あたり 0.70 件、2003 年)から 3 件(10,000 患者・日あたり 0.14 件、2016 年)へと減少し、死亡数は 7 例(10,000 患者・日あたり 0.27 例、2003 年)から 0 例(10,000 患者・日あたり 0.00 例、2016 年)へと減少した。
結論
サーベイランス、集学的な戦略の実行、ならびに医療従事者の院内ガイドライン遵守に関する定期的な評価の実行により、末梢静脈カテーテル関連血流感染症の持続的な減少がもたらされた。この減少は黄色ブドウ球菌による血流感染症の発生率およびそれに関連した死亡率に大きな影響を与えた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
末梢カテーテル関連感染症および血流感染症の疫学と予防については、カテーテルの使用頻度が莫大であることに比して、情報・エビデンスが少なく、また注目されにくい状況が続いていた。本検討は、複数の対策を有機的に複合させた組織的な活動・介入を長期間行った成果を示したものである。医療事情の差はあるものの、今回の結果は、本邦で常時 900例の入院がある病院でも月間 1 例末梢カテーテル関連菌血症が発生するかどうか、ということになる。継続することもまた非常な労力と工夫を必要とする。一読をお勧めする。
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