救急ケア環境において空中微生物と表面微生物との間に関連はあるか?
Is there an association between airborne and surface microbes in the critical care environment?
J. Smith*, C.E. Adams, M.F. King, C.J. Noakes, C. Robertson, S.J. Dancer
*NHS Lanarkshire Hospital, NHS Lanarkshire, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e123-e129
背景
集中治療室(ICU)における空気の質に関するデータはほとんどなく、また受け入れられている基準はない。ICU 内の空気中病原体と院内獲得感染症リスクとの間に関連があるのか、あるとすればどのような関連なのかは、いまだに不明である。
目的
第1 に ICU における空気および表面の環境汚染の関連を調べること、第 2 に環境汚染とICU で獲得されたブドウ球菌感染症との関連について調べること。
方法
10 床の人工換気患者の ICU において 10 か月間にわたり 10 回のサンプリング日に患者、空気および環境のスクリーニングを実施した。患者近傍の接触箇所(N = 500)および空気(N = 80)について、総コロニー数および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のスクリーニングを行った。空気中のコロニー数と表面上のコロニー数の比較を、空気および表面のバイオバーデンについて提唱されている基準に従って行った。患者について、ICU で獲得されたブドウ球菌感染症の徹底的なモニタリングを行った。
結果
全体で、表面 500 カ所中 235 カ所(47%)で生菌数の基準(2.5 cfu/cm2 以下)を満たしていなかった。受動的サンプリングによる空気サンプルの半数(40 個中 20 個:50%)は、空気汚染指標の基準(2 cfu/9 cm プレート/時)を満たしておらず、また能動的サンプリングによる空気サンプル 40 個中 15 個(37.5%)は、清浄な空気の基準(10 cfu/m3 未満)を満たしていなかった。落下菌測定法によるデータは、表面における合格/不合格の割合により近く、表面の基準値を 0 ~ 20 cfu/cm2 で評価した場合に、空気の指標と表面との間の一致度が最も高かった。空気の場合と比較して、衛生上の合格/不合格の結果を最も高く反映すると考えられた表面の基準は 5 cfu/cm2 であった。ICU で獲得されたブドウ球菌感染症の検出率は、サンプリング実施日の間の 72 時間において、ベッドあたりの表面上のコロニー数と関連していた(P = 0.012)。
結論
受動的空気サンプリングにより、表面から得られたデータと同様の定量データが得られる。集中治療室における感染症リスクを評価する上で、落下菌測定法はルーチンの環境スクリーニングの代用として役立ち得る。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
病院の改修・解体工事における感染対策評価(infection control risk assessment;ICRA)では、ICU はハイリスクエリアに相当する。ICRA は基本的にはアスペルギルスなどの糸状菌を対象としたものであるが、本研究からは MRSA などのような一般細菌も関与するようである。空中の細菌が落下するから環境が汚染するのか、汚染した環境から細菌が舞い上がるのか、因果関係は明らかでない部分もあるが、いずれにせよ一定の清浄化は必要であるし、それが ICU や手術室ならなおさら厳密な清掃が求められるであろう。
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